ピュンピュン丸

地獄門のピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

地獄門(1953年製作の映画)
3.3
権力の絶頂期の平清盛に仕える武士、盛遠(長谷川一夫)が美しい人妻袈裟(京マチ子)に一目惚れしてしまい、猪突猛進して進退を誤る話。

見ていて、全く主人公盛遠に共感できない、というより、残念だが「お前のような奴は、地獄に堕ちろ!」としか思えない。

最高権力者の清盛に反旗を翻した兄を非難するくせに、お前は女狂いかい!恥を知れ!武士は二君に仕えずだからと兄を非難するが、そうだとしたら、袈裟のいう、夫と決めた人を一生愛し続ける『女の道』も理解できるはずではないか!この身勝手さは本当に地獄に堕ちるべきだぞ。

京マチ子演じる袈裟は、似てると言えば似てる設定の黒澤『羅生門』とは全く違う行動をとる。よく考えたら、この作品、このまんまの設定で始めて、『羅生門』と全く同じ展開にしていくこともできる。是非、やってみてほしかった。(笑)

しかし、この映画は、カンヌ映画祭を制したほどの優秀な芸術作品。

何が評価されたかといえば、この純日本風の雰囲気が美しいカラーで綴られているところではないか。京マチ子の平安の衣装を着ての身のこなしはまさに芸術的だし、盛遠が忍び寄る、人妻袈裟の住む家の部屋から見える月の美しさなどはもはや東洋神秘的で幻想的だ…。

こういうのに、知性ある西洋人の人たちは本当に弱いんだなぁと思ったなぁ。