R

惑星ソラリスのRのレビュー・感想・評価

惑星ソラリス(1972年製作の映画)
5.0
めちゃめちゃ長くなっちまったので適当にスルーしてください笑 久々の6回目をBlu-rayにて。かなりグレーな印象の映画やったけど、こんなに色彩鮮やかやったんやー知らなかった。特に、主人公クリスが惑星ソラリスの調査に旅立つ日、自然に囲まれた田舎の家で、地球最後の1日を過ごす序盤の映像の美しさはすごい。水中に揺らめく水草にズームインしていく映像は、じっと見つめてると目がおかしくなったような感じがするほど美しい。なぜクリスが地球を発つかというと、ソラリスから錯乱した状態で地球に帰って来たある調査員が、ソラリスで4mくらいのサイズの赤ん坊を見たんだ! とか訳の分からんことを言ってるので、ホントは何があったのかを探り、行き詰まってる謎の惑星の調査自体を打ち切りにすべきかどうか判断するという任務を帯びているのだ。で、実際ソラリスに着いてみると、他の3人の調査員もみな精神に少々異常をきたしていて、うち1人は自殺したらしい。ソラリスという惑星は、全体がプラズマ状の海になっていて、その海は精神の塊みたいなものである可能性があり、近くに来る人間の心に最も深く刻まれているモノを具現化する力を持っていることが分かる。ひと通り船内の様子を調べたあと、一旦自室のベッドで眠りについたクリスが、ゆっくり目を覚ますと、何と、そこに、数年前に自殺させてしまった妻のハリーが座っているではないか…!という話で、ストーリーだけ追っていくと、ものすごくこわいSFホラーなんだけど、同時にクリスがハリーの自殺に対して抱いている罪の意識が蘇り、渇望に似た愛情が湧き上がり、目の前にいる、明らかにコピーだが、まさにクリスの心に残っていたそのままの姿のハリーに接し、彼の心がどう動いていくかを見つめるサイコロジカルドラマにもなっている。簡単に言ってしまうと、宇宙の遥か彼方にまでやって来た人間が対峙したものは、結局自分自身の心である、ということで、自分の主観的世界にしか生きられない人間は、どこに逃げようとも自分自身からは絶対に逃れることができない、という真理を、瞑想的なテンポで、じっくりと描いていく。これがものすごく新鮮で刺激的で、初めて見たときは心の底から深く感動したもんだが、何度見ても面白く、見れば見るほど理解も味わいも深まっていく。初回時は、平穏でノスタルジックなラストシーンに不穏な演出がなされてるのを見て、おや?ん?何か変だぞ、と思ってたら、やがて全身に戦慄が走る驚愕のラストショットに移行。こんな凄さと怖さと悲しみの衝撃は、それ以前にも以後も食らったことがない。そして、この映画を観る度に思わさせるのが、以下のことだ。無限に果てしなく広がっているこの宇宙とは、そこに存在する物質的エネルギーが、一瞬たりとも止むことなく、脈々とダイナミックに永遠の運動を行っている場である。そんな中、様々な条件が奇跡的に整ったことで、ほんの数十億年の間に生命が誕生し、それがぶわっと一気に繁栄、と同時に生命はすさまじいスピードで複雑化の一途を辿り、やがては精神を備えた存在まで生まれだした! ということはだ。無限の宇宙が物質的エネルギーで満ちていたために地球や地球上の物質が存在し始めたのと同様に、そもそも全宇宙に精神的エネルギーが遍満している、という前提がなければ、人間のなかに精神活動が生まれるはずがないのである。ですよね? あるものはある、ないものはない、と、とある古代の哲学者が言ってて、コイツ何わけわからんことかっこよさげに言いくさっとるねん、と思っていたが、そう考えると、それ以上に端的には言い表しようがない。つまり、宇宙とは、物質と精神の双方を備えた生命エネルギーの海のようなものとして理解できる、てかそう理解されるべきなのではないか。条件さえ揃えば、全宇宙に潜在していた生命が顕現し、物質活動を基礎にして精神活動をも発生させるのである。その根拠に、生物も非生物も、突き詰めると、DNAやタンパク質といった「物質」で構成されており、生物・非生物を隔てる明確な違いは、実際はないというではないか。以前、とある本で遺伝学者アルベールジャカールが「すべてのものが宇宙存在の一部であり、起源は共通している」みたいなことを語っていたのを記憶しているが、彼の言をとっても、やはり精神活動は宇宙存在の一部でなければならない。何てこった。そして、個々の生命体(もちろんここで言う生命体とは非生物も含まれる)は、それぞれ特有の個性を備えたまま、偶然性と必然性のなかを絶えず流転し、一瞬たりとも止むことなき変化変化の連続のなかに存在しているのである。んー。短くうまく説明するのはむずいっすね。まだまだこれをもっと噛み砕いたり、そこからいろいろ発展させたりして、延々と数十ページ分くらい語りたいところだが、長くなりすぎるのでこの辺でやめときます笑 そんなこんなを20代前半のときに、初めて漠然と感じさせてくれたのがこの映画で、ものすごーーーく感動したものだよ。今見ても初めて見たときの驚異がより深化した形で胸に迫る。いまは昔よりはハッキリその感じを理解できる。ちょっと怖いけど素晴らしい傑作です。また見たい。あ、ちなみに、人間が不幸になったのは宇宙的感性を失ってしまったからだ、みたいなセリフがあって、昔は、何や難しいこと言うてはんなぁ思てたけど、いろいろお勉強やら何やらを経た今、この意味が曇りなくハッキリと分かるようになりました! 勉強とはしてみるもんですね。大賛同でございます。タルコフスキーさん大賛同です!
R

R