えんさん

惑星ソラリスのえんさんのレビュー・感想・評価

惑星ソラリス(1972年製作の映画)
3.5
広い宇宙にはさまざまの生命形態がある。そんな未知の惑星ソラリスも、星自体が一つの生命体であり、その調査はプラズマの海の理性活動の兆候により行き詰まっていた。数年前、このソラリスの探査から戻ってきた中尉の報告ビデオを見たクリスは、ソラリス探査船で起こっている謎を究明するために宇宙ステーションに乗り込む。そこで彼が目撃したのは、三人の学者がいるはずのステーションの荒廃ぶりだった。クリスの友人の物理学者は既に謎の死を遂げており、残っていたスナウトとサルトリウスも何かに怯え、部屋に閉じこもったままだった。彼らから宇宙船内に何を見ても驚くなと釘を差されたクリスは、いるはずのない少女の姿を目撃する。厳重に部屋にロックをかけて眠りについたクリス。目覚めると、彼の部屋には何年も前に亡くなった妻がいたのだった。。異質の生命体と初めて接触した一人類を描く、ファースト・コンタクト・テーマのSF作品。72年カンヌ映画祭審査員特別賞受賞、国際エヴァンジェリー映画センター賞受賞作品。「僕の村は戦場だった」のアンドレイ・タルコフスキー監督が、1972年に製作した作品。

昨年見た「ローガン・ラッキー」を撮りあげたスティーブン・ソダーバーグ監督。彼のフィルモグラフィの中で僕が好きなのは、2002年に公開されたジョージ・クルーニー主演の「ソラリス」。もともとはスタニスアフ・レムというSF作家の小説を原作としているのですが、難解と呼ばれる原作を見事な映像構成力で魅せたソダーバーグだと僕は今見ても思うのですが、映画好きの中ではあまり評価が高くないのが意外なほどでした。それもそのはずで、映画好きの中では今回観たタルコフスキーの1972年製作「惑星ソラリス」の評価のほうが高く、カンヌを始めとして数々の賞も受賞している名作となっています。2002年公開の「ソラリス」を観てから、長年観てみたいと思っていましたが、今回タルコフスキー映画特集が組まれているプログラムの中で上映されるとのことで、早速スクリーンで楽しんできました。

1972年の作品と、2002年の作品を一概に比べられるものじゃありませんが、今回の「惑星ソラリス」は「ソラリス」よりも登場人物の台詞が多く、説明過多になっている印象がありました。その意味では映像で魅せた「ソラリス」のほうが一枚上手かなとも思います。それにどうしても本作に登場してくる宇宙船は宇宙船に思えず、単なる化学工場のような感じを受けざるを得ません。同じSF作品でも、本作より前となる1968年製作の「2001年宇宙の旅」(スタンリー・キューブリック監督作)のほうがよほど宇宙を舞台にしている感じを現在でも感じます(それだけ、「2001年〜」は凄いってことかもしれないですが)。

しかし、映像に特化した分だけドラマとしては緩慢な感じをうける「ソラリス」に対し、本作は「ソラリス」以上のドラマが宇宙船内でも、それにソラリスで起こっている謎をどう対処していくかという前日譚の部分(第一部の前半)も、ドラマとしての組み立てがよくできていると思います。クリスとハリーとの回想劇や、地球にいる家族との想い出がソラリスの活動とともに、クリスの思考の中で混乱していく様相も巧みな映像表現によって生み出している分だけ、ドラマ劇としての突出したところが本作の魅力なのかなとなんとなく思います。でも僕が好きなのは、やはりソダーバーグ版「ソラリス」のほうなので、早くブルーレイ化して欲しいなと(本作のほうは、ブルーレイあるのに。。)切に願います。