しゅん

惑星ソラリスのしゅんのレビュー・感想・評価

惑星ソラリス(1972年製作の映画)
4.5
生命を慈しみ死ぬことが出来たなら幸せである。人間は個を以てしか愛すことができない。

生と死を繰り返す、惑星ソラリスにディスプレイされる“ハリー”。クリスの前妻ハリーの仮面を被った幻影だが、“ハリー”は最も人間らしく感情と思考を身に付けていく。クリスを愛し、クリスに愛されたかった“ハリー“。
しかしクリスが愛しているのは前妻、過去のハリーであり、幾度も甦る個を超越した“ハリー”自身を受け入れることは難儀である。

他方、前妻、過去のハリーはクリスの愛を感じようとして自殺を図ったわけである。

眠りに見る夢は人類に共通する財産である、と作中で紹介された。

本来、クリスは夢の中でハリーを見続けるべきであった。死した最愛の妻がいまもなお目の前におり続けるとしたなら、クリスの世界に(最愛の妻が死ぬという)恐怖はない。恐怖がなくば不安もないし、生を感じることもない。楽しみしかない世界はやがて“楽しむ心”を感じなくなるから、無味無臭の眠りの世界と変わらなくなる。

夢にも終わりがあり、夢の中で起こり得ない出来事には、目覚めたあとに尊さを感じるものだ。

原作未読なので分からないが惑星ソラリス自体が愛を求めていたのではないかと思った。しかしそれはありえないのである。
(だってそれってつまり『地球とわたしどっちが大事だって?地球に決まってるだろ●ね!』って映画は流行らない。いや納得するとしても恋人の死を以て泣くんでしょ?)
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