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セルピコの2MOのレビュー・感想・評価

セルピコ(1973年製作の映画)
3.7
法を尊ぶべき警察官やあるいは政治家が不正を働き、その権力的な地位に恋々としがみつくような社会は確実におかしくなっていく。
規範となるべき存在が象徴的価値を示せないどころか、嘘や詭弁、隠蔽でもってして我欲に走ることを是認するような社会で、腐敗は全市民に広がっていくものだ。
いや、腐っていることに気付ければまだいい方。悪意に無関心が入り混じり、人は低きに流れ、社会は堕落していく。
静かに腐り果て常態化した、つまり慣習のもとで異を唱える者の方がいつしか変人扱いされる。
そして狂わされる。

別に正義感だとか、そんなカッコのいいものでもない。命を賭して巨悪と戦うそんなつもりもない。
ただ、許されざることには妥協できない性分なだけだ。譲れない矜持があって、人生を生きているだけだ。
子どもの頃に憧れたヒーローたちに、それは教わったものだ。

正直者が道化として嘲笑われる時代。キングの鼻を明かせるのもジョーカーである。
四面楚歌に孤独な運命は強いられ、挙句、勝利は万に一つであろう。
その万に一つが数多、歴史に証明され、映画に再生されるアメリカという国の底力。

たとえ暗黒の時代がやってきても、公正すなわち自由のために立ち上がる者たちが必ずいるという希望が眩しい。
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