R

セルピコのRのレビュー・感想・評価

セルピコ(1973年製作の映画)
4.5
ルメット監督の大ファンなのにこのビッグタイトルを見たことがなかった! ってことで、はじめて見てみた。やっぱいいわー。渋い! 冒頭いきなりアルパチーノ演じるセルピコという名の私服刑事が、顔面を撃ち抜かれて血まみれで病院へと運ばれてるという修羅場のピーク! What?! 一体何が起きたのだ! と話が過去に戻り、彼がルーキーコップの時代へ。セルピコのキャリアのスタート時点で、周りの先輩ら、犯罪を見逃す代わりの賄賂を悪者たちから受け取りまくり。受け渡しの場所もびっちり決まってて、その収集と分配にセルピコも加わるようピアプレッシャーがかかる。しかし、警察の正義を信じて疑わないセルピコは、絶対に何があっても加担しない。そのため、彼は仲間たちから信頼を失い、危険人物としてリンチの危険性をも感じながら勤務し続けなければならなくなる。彼はNYの様々な部署に転属されるのだが、あらゆるエリアで賄賂が当たり前のように横行してて、この状況、何とかならんのか、と信頼できる友人を通して上層部に持ちかけるのだが、そいつらもその一端を間接的に担っているので、保身のために話をはぐらかしまくる。そんな最低なヤツらに、ひとり対抗しようともがくセルピコは、ついに命の危険を感じ始める。本作ではセルピコを演じるアルパチーノの魅力が爆発してて、ツルツルの新米の時も、小慣れて私服警官になりたてのときも、完全にヒッピースタイルを確立してお髭ぼうぼうになったときも、美しい顔の隆起とキラキラした瞳からまったく目が離せない。何たるイケメン。何たる演技。一人きりの戦いに苦悩する彼は、付き合いはじめた女との関係が破綻し始めるんやけど、このあたりのシーンのいやーな苛立ちとか、せっかく逮捕した悪党が同僚たちとナアナアで仲良くしてるときの激怒など、彼の憤怒が見てるこっちにまで伝わってきて、すごい気分になる。しかし、彼の激情を全くうっとうしい感じさせないとこがパチーノ演技の素晴らしさで、彼の中の正義や愛や忍耐の炎がちゃんと心に響く。で、孤立無援だった彼が、この問題をある筋の人々に持っていくとこらへんから、流れが変わってくるねんけど、この辺になると、もう誰がホントの味方で誰がpotentially敵かが、訳分からなくなるため、見てるほうは、まさかこいつも⁈と思ってしまう。その辺の区別がもっとハッキリしてたら個人的にはもうちょい見やすかったかなとも思う。が、きっとこれがルメット流のスタークなリアリズムなのでしょう。NYの街並みや、その荒んだ感じとか、時代の厳しさをドラマの背景として浮かび上がらせているのも面白いし、前半若干散らかって見えるのお話のピースが、全体像としてだんだんハマってくるのも面白い。やぱルメット好きやわー! で、これ見てて思うのは、日本のサラリーマンもまぁ似たようなもんだな、てか、もっとヒドイよな、てこと。どんだけ組織が腐ってても、究極的な目的がそこから金を頂くことから、金の出どころには絶対逆らえないって言う。人間性の金への隷属化。嫌ですねー。しかも日本は基本クビにできない国やからどんどんひどくなってるよね。これから社会に出る若い人たちかわいそう。セルピコのように長いものに巻かれないハートを!!! けどセルピコはそもそも正義がテーマの職場やもんなー。ホントに幸福に生きるのが難しい社会になってしまったもんです。ま、でも、誰にも負けない抜きん出た実力を一個でも持ってたら、また話は変わってくるよね。頑張って!
R

R