ロバート・ハロンの鋤を持つ手が少しずつ下がってゆき、ついに同じ鋤を持つリリアン・ギッシュの手に触れるその瞬間が素晴らしい。帽子のつばが触れ合いそうな距離での手の触れ合いはそれ以上の進展を見せず、ぎこちない静止状態の男女の背後ではもどかしそうに木々が風に揺れている。
ニューヨークに出稼ぎに行ったロバート・ハロンの服を着せられた案山子を引っこ抜いて縋り付くリリアン・ギッシュは可憐そのものだが、ハロンの父を演じるジョージ・フォーセットが息子のコートと気づかずポケットを弄る場面は異様な緊迫感がある。
ジョージ・フォーセットとケイト・ブルースの繋ぎ、切り返しのようでフォーセットは二階に、ブルースは一階にいるのでまったく切り返しではないけど、同じ空間にいるように編集することでフォーセットの目の前に死体があるという状況がさらにサスペンスフルなものになってる。
ちなみに冒頭の字幕はオスカー・ミショー『我らの門の内にて』のタイトルの元ネタらしい。