アメリカ映画で初めてオールロケ撮影を行った作品であり、ジュールス・ダッシン監督が一躍脚光を浴びるようになったフィルム・ノワール。
"There are eight million stories in the naked city. This has been one of them."
セミドキュメンタリーというジャンルを確立したと言われている元祖刑事サスペンス。ニューヨーク市警殺人捜査課のベテラン&新米刑事が、元モデルのブロンド美女"デクスター・ジーン"殺人事件の真相を解明すべく、地道な捜査を繰り広げる。
特徴は、当時画期的だったオールロケ撮影と、それに伴うリアリズム描写。
オールロケ撮影。メインのクライムサスペンスドラマに、1947年夏のニューヨークの街並みや風俗描写が、実況中継のような役割を果たす第三者視点のボイスオーバーと共に挿入されていく。マンハッタン上空を空撮したオープニングシークエンスから心を掴まれた。メインキャストは俳優だが、本物のニューヨーカーも多数出演しているとのこと。
リアリズム描写。娘デクスター・ジーンを亡くした母親の姿が心に残る。"どうしようもない娘だった"と愚痴をこぼし続けるも、いざ遺体となった娘と対面すると、"ああ可愛い娘よ、なぜ神は娘を醜い姿にしなかったのか。"と涙に伏せる。とても生々しく、居た堪れなくなった。
クライマックスは、ウィリアムズバーグ橋を主な舞台とする刑事vs真犯人の追跡劇。臨場感、疾走感があり、スリリングだった。『フレンチ・コネクション』のあの有名なチェイスシーンに影響を与えている気がした。
マルドゥーン警部補のユーモアセンスと親しみやすい笑顔が実に良い。
事件の証言者として、自分は20代だと主張して譲らない謎の御婦人が現れる。プロレス道場。ラビットパンチ。
・黒澤明の『野良犬』は本作を下敷きにしている。
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