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裸の町のほーりーのレビュー・感想・評価

裸の町(1948年製作の映画)
3.9
赤狩りでハリウッドを追われた監督の中で一番昇華した人といえば、おそらくジュールス・ダッシン監督だと思う。

奥さんがメリナ・メルクルーリ(女優でさらにギリシャの文化大臣!)だったり、息子(先妻との子)が「オー・シャンゼリゼ」を歌ったジョー・ダッサンだったりと私生活は華々しいけど、作る映画は「真昼の暴動」や「男の争い」などいぶし銀の渋さがある作品ばかり。

そのギャップゆえにとても好きな監督のひとりです。

本作「裸の町」は、当時ハリウッドスタジオでの撮影がほとんどだった時代に、ニューヨークのオールロケを敢行したセミ・ドキュメンタリー作品(室内でのシーンは流石にスタジオでしょうが)。

黒澤明の「野良犬」やフリードキンの「フレンチ・コネクション」といった刑事ドラマの原点がこの作品だと思う。

摩天楼の島、ニューヨーク。ある夜、美人モデルが何者かによって殺害される。
事件を捜査するのは、小柄ながらベテラン鬼刑事バリー・フィツジェラルドと、詰めが甘いところもあるがタフな若手刑事ドン・テイラー。

「我が道を往く」や「静かなる男」のバリー・フィツジェラルドが主役という時点でもう渋すぎる。

この刑事二人の関係が、のちの「野良犬」の志村喬と三船敏郎とそっくり。
「野良犬」はさらに拳銃を盗まれてしまった三船の葛藤があるので、両者を比較してしまうとドン・テイラーはちょっと影が薄い感がある。

セミ・ドキュメンタリーの演出のせいか、劇中、ナレーションが頻繁に登場する。

このナレーションを務めているのが本作の製作者であるマーク・ヘリンジャー。

奇しくもヘリンジャーは本作公開直前に若くして亡くなったので肉声が残っているのはかなり貴重かも。

■映画 DATA==========================
監督:ジュールス・ダッシン
脚本:マルヴィン・ウォルド/アルバート・マルツ
製作:マーク・ヘリンジャー
音楽:ミクロス・ローザ
撮影:ウィリアム・ダニエルス
公開:1948年3月4日(米)/1948年12月24日(日)
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