1948年〝眠らない街、ニューヨーク〟の、生の姿を最初に映画として描写したであろう秀作。
ジャーナリストでも有りコラムニストでも有るこの映画のプロデューサー〝マーク・ヘリンジャー〟、彼のニュース調のナレーションで物語が進行するドキュメンタリー・タッチの犯罪ミステリー。
ニューヨークのアパートの一室で若い女性の死体が発見され簡単な殺人事件と思いきや、犯人探しに混迷する殺人課のベテラン刑事らを中心に捜査が始まる。
そのベテラン刑事役〝バリー・フィッツジェラルド〟は『我が道を往く』で、アカデミー賞の主演男優賞と助演男優賞の同時にノミネートされ話題になった名優。
そしてこの作品は〝バリー・フィッツジェラルド〟以外の俳優を全て新人・無名で製作する異色作でもある。
この映画の最大の見所はニューヨークの街を実際に撮影されたこと。
今では当たり前だが当時の一般的な映画はどんな設定でもセットを組んで撮影され、いわば作られた仮想の理想空間の物語でしかなかった。
ニューヨークの街をオールロケで敢行した事によって当時のアメリカ都市文化を堪能できると共に、迫真のリアリティ溢れる映像は素晴らしい。
多種多様な人種が入り乱れる市民は決して裕福とはかけ離れ貧しそうにも見える反面、気持ちは活気溢れるニューヨーカー達の漲る生命の力強さに目が注がれてしまう。
そのニューヨーカー達もロケの珍しさからか、暫しカメラを見てしまう不自然さはご愛嬌の範囲内。
もちろん物語の方も犯人に近づきそうで遠のく地味な捜査展開だが、『捜査は足で』と言うように古典的捜査でニューヨークの街を刑事達が靴底を減らす..★,