ひろ

わが命つきるとものひろのレビュー・感想・評価

わが命つきるとも(1966年製作の映画)
3.3
ロバート・ボルトが自らの戯曲を脚色し、フレッド・ジンネマンが製作・脚本を務めて製作された1966年のイギリス映画

第39回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚色賞、主演男優賞(ポール・スコフィールド)など6部門を受賞した

歴史映画は歴史の勉強になるから好きだけど、この映画は人生における大切なことまで教えてくれる。権力者がわがままを言いだしたら、多くの人はそれに従う。しかし、トマス・モアは最期まで信念を曲げなかった偉大な人物だ。信念を曲げないというのは、フレッド・ジンネマン監督作品に共通するテーマであり、ハリウッドに侵食されず、己のスタイルを貫いた監督そのものだ。

史実を基にした歴史映画で大切なのは、いかに時代考証を正確に表現するかということ。この作品は衣装などの細部までこだわって描かれていると思う。その時代の雰囲気を違和感なくスクリーンに映し出したからこそ、アカデミー賞を6部門も受賞したのだろう。

信念の男トマス・モアを演じたポール・スコフィールド。オスカー俳優となったものの舞台をメインとしていた俳優で、その演技には非の打ち所がない。裁判のシーンや家族との面会のシーンはすごかった。ヘンリー8世を演じたロバート・ショウも個性的だったけど、脇役ながらも怪優ぶりを発揮していたオーソン・ウェルズは印象に残った。

無名時代の名女優ヴァネッサ・レッドグレイヴが、アン・ブーリンの役で出演している。歴史はいろんな角度から検証した方が面白いので、ナタリー・ポートマンがアン・ブーリンを演じ、この映画と同時代をブーリン家の目線から描いた「ブーリン家の姉妹」を観ることをお薦めする。歴史って面白い。
ひろ

ひろ