ギルド

ゴールデン・エイティーズのギルドのレビュー・感想・評価

ゴールデン・エイティーズ(1986年製作の映画)
3.6
【ロミジュリな恋愛だな!←すまん、貴方のファム・ファタールじゃないんだわ】【シャンタル・アケルマン映画祭2023】
■あらすじ
美容院やカフェが並ぶパリのカラフルなブティック街を舞台に、そこで働く従業員たち、客たちが恋模様を歌い上げるミュージカル。
パステルカラーの衣装に身を包んだ登場人物たちが歌い踊るロマンティックな浮遊感と、愛に対するアケルマンの容赦ない視線が巧みにバランスされている。
シナリオにはフランソワ・トリュフォー監督作品に欠かせないジャン・グリュオー、アンドレ・テシネ監督『ブロンテ姉妹』(79)やジャック・リヴェット監督『美しき諍い女』(91)を手掛けたパスカル・ボニゼールと名脚本家が参加した。

■みどころ
恋愛の行方を追ったミュージカル映画。
これシャンタル・アケルマン作品?と思うほど陽気でテーマ曲含むBGMが良かった!
…の割にロミジュリの関係でファム・ファタールと思ってた相手が実は…な昼ドラ真っ青レベルの話が多くて闇深いギャップに辟易した1作。

服屋を営む夫婦の息子ロベールは隣の美容室で働く高飛車なリリという女の子に恋する。
リリは年上のおじさんが金目的で好きであり、ロベールみたいなガキンチョはいいっすな態度を取る。
その一方で、同じ美容室で働くジャンはロベールが好きで友人のパスカルやロベールの母親に相談しながら何とかアプローチをしていく。
本作はそんな三角関係を展開しながらも、ロベール母と昔からゾッコンで年取った今でもアプローチしまくるイーライも登場したりとブティック街を中心に様々な出来事が起きるが…

本作は恋愛に関するミュージカル映画であるが、純粋な恋愛を映す一方で親の戦略的な結婚・見合いというしがらみ、互いにロミジュリでファムファタールが異なる事を明示する「恋愛の複雑さ」を描いた映画でもある。

ミュージカル映画については不思議の国のアリスやコーラスラインに比べると静かな映画であり、シャンタル・アケルマン作品の中では派手で娯楽性ある部類ではあるものの全体的には控えめなゆっくりした映画である。

が、本作の「俺にとって貴方はファム・ファタールだ!」と猪突猛進に行く姿、幻想を抱く姿は生きる原動力でもあり、活気づく象徴でもある事は魅力的な主題だなと感じました。
興味深いのはファム・ファタールだと感じる活気がブティック街と連動していて、その活気は刹那なものでもあると明示する展開の妙にあると思います。

当然ながら恋愛は空想な幻想と空疎な現実が介在していて、それでもやりくりせないけない部分にアケルマン映画特有の複雑さ・諦望のようなものを感じて苦い作品でした。

ちなみに恋愛と服の例えをして、みんなが裸になったら商売あがったりだよwと言って〆るのは草でした。
ギルド

ギルド