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愛の残像のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

愛の残像(2008年製作の映画)
3.0
[原題"夜明けの最前線"より断然良い] 60点

最新作『The Salt of Tears』が"何十年も前の焼き直しみたいな映画"と呼ばれていたが、実際に観たことあるフィリップ・ガレルの作品は『現像液』と『孤高』というハード路線ばかりだったのでなんとも言えないのが正直なところ。同じような映画を大量に撮っているというイメージだが、意外にも本作品でカンヌ映画祭のコンペは初参加、それ以降も選出されては居ない。『自由、夜』『つかのまの愛人』それぞれ別々の部門に選出されたくらい。彼の主戦場はヴェネツィアのようだ。それも、例のアメリカのローカルな映画の祭典に毒される前の。

写真家の男が被写体である女優と恋に落ちる前半はどこかノスタルジックに描かれていて、"資金提供してて監視されてるの"という突然の告白から昔のミューズだったジーン・セバーグぽさを演出しているのかもしれない。女優は案の定自殺してしまい、その後も亡霊のように女優が現れることを考えると、セバーグなりニコなり彼のミューズだった女優たちの亡霊を抱え続けているのだろう。今の妻キャロリーヌ・ドリュアスに捧げられているらしいが、どうみても前妻ブリジット・シィのこと引きずってる言い訳にしか見えないし、シィ以前のミューズたちも絡んできて訳分かんないことになってるのは、最早見えてて笑える。全体的にちょっと感傷的すぎるが、鏡のシーンはホラー映画ぽくてお気に入り。『SAW』でああいうシーン観たことある気がする。

思い出したかのように写真要素が後半で復活するのも笑える。そういえば写真家だったな、と。『鬼火』っぽい鬱なラストも良い。毎回毎回死にたい気持ちを抱擁されてもたまらんので、私の代わりに死んでくれる映画があっても良いんじゃないか。
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