『救いの接吻』『ギターはもう聞こえない』などのフィリップ・ガレル監督によるフランス映画。キャストはルイ・ガレル、ローラ・スメット、クレメンティーヌ・ポワダッツなどなど
一人の男性カメラマンが被写体となるモデルの女性と恋に落ちる。しかし彼女は所帯持ちで禁断の恋であった。そのことに怖気づいて彼から関係を終わらせるが、次第に彼女は精神を病み亡くなってしまう。その後カメラマンは違う女性と結婚するが、次第にモデルの女性の残像に取りつかれ…
フィリップ・ガレルによる悲恋を題材にした映画なのか、現代は夜明けの境界というものだが、邦題は『愛の残像』とより明確に分かりやすいようになっている。実際前述したように簡潔な内容のためにあまり台詞を負わなくてもすんなり見ることが出来る。
画面が常に二人の関係性を捉えていて、それでいて一つ一つの機微から彼らの心情が伝わってくるような映像構成がとても良かった。
他にもベッド越しでは煽りのショットで二人の身体的撮り方というものが対比的に入れ子構造になっているというのも、如何にも二人の関係の依存度を高めているようであってそこがとても良かった。
一番の見せ所はやはり鏡を駆使した彼女の幻影を映し出すような終盤の演出である。鏡を用いて彼の心情のトラウマ的要素や心残りの要素を映し出すというのは、カサヴェデスの『オープニングナイト』を思い浮かべた。
最後の絶望的なラストも何というか、鬼火などでも見かける暗いフランス映画の当たり前の結末のようにも見える。そこまで暗いようにも見えず当然の結末のようになるのがいかにもフランス映画的というか。
やはり、後追い自殺というのはどうしても美化されてしまうし、ルイ・ガレルの美貌も含めてやはり美化されてしまうという所、後味悪いのが好きな自分としてはあまりそこは装飾しないでほしいようにも思える気はする。
やっぱり自分はロングショットを撮る場合はもうちょっと被写体の動的な物が目立ち常に驚きを与えるような物が好みのようで、今回のはある意味静的な物が強いようにも感じられるが、そういうのでもモノクロの映像だからこそできる被写体の陰影が人間の内面的な暗さを物語っているようにも思えた。
彼女が何故か病院内で意味ありげに床を這いだりする所とかは良かったと思う。
ポストヌーヴェルヴァーグは、ヌーヴェルヴァーグ的な在り方を更に追求したジャン・ユスターシュみたいな人間とジャック・ドワイヨンのようなそうでない在り方を追求した人たちもいるというのが現状の考え方としてもいいかもしれない。フィリップ・ガレルはどっちに入るんだろう。
しかしやはりどれも身内芸になるんですよね。そこがなんか個人的には乗れないような気がしなくもない。
いずれにしても見れて良かったと思います。