このレビューはネタバレを含みます
1963年制作、アルフレッド・ヒッチコック監督の元祖アニマルパニックムービーの傑作である。
大昔、荻昌弘の月曜ロードショーで観たのが最初かもしれない。
資産家のご令嬢(ソーシャライツというらしい)でありながら何かとお騒がせなメラニー(ティッピー・ヘドレン)がサンフランシスコのペットショップで弁護士のミッチ(ロッド・テイラー)と偶然出逢うところから物語が始まる。
後から入ってきたミッチが店員と間違えて声を掛けるが、メラニーは悪戯で店員になりすます。
ミッチはすぐお騒がせメラニーと見破るも客と店員でそれぞれなりすましが続く。
最後にミッチが悪戯メラニーに過去のスキャンダルに対するきついお叱りを言い放って退散する。
勝気なメラニーは車ナンバーから居所を探り出す。
実に旨い出逢いのシークエンスで、このままいけば恋愛映画となるはずが‥。
メラニーがボートに乗ってミッチの探していた鳥を密かに届け、帰りの船上で隠れてミッチの反応を覗いていると、カモメに攻撃される。
このあたりから徐々に鳥達の行動に異様さが目立って来る。
この映画の最も怖いところは鳥達の異常行動の理由が分からないところにある。
ミッチの家で攻撃がピークに達するシークエンスで、夜の室内で静寂が続く中、外の羽音が徐々に大きくなり、家への激突がはじまる。塞いだ板に穴が空き、口ばしでつついているのが無数に見えてくる。
映画「わらの犬」の暴徒の攻撃を受ける家の中の状況と同じ怖さがある。
そして衝撃的なラストへ。
映画の流れからすれば、立派な恋愛映画になるはずが、鳥という小動物の集団での異常行動が始まるとその流れはガラッと変化する。
とりわけそうなる理由が語られないところに怖さが潜在する。
我々はメカニズムはわからないものの動物たちの大災害直前の予知的異常行動というのをしばしば耳にし、何か不可思議な自然界の有り様を体感している。
しかしこれが集団となって人間を攻撃してくるとなるとそこに大自然からの報復というメタファーが表現されているのかもしれない。
この映画を観た後、しばらく鳥に近づけなかった。