福福吉吉

二百三高地の福福吉吉のレビュー・感想・評価

二百三高地(1980年製作の映画)
3.5
ロシアのアジアへの南下政策に危機感を持った日本は1904年、中国の遼東半島の旅順に要塞を構えるロシアに対して攻撃を開始する。日本陸軍は司令官・乃木希典(仲代達矢)の指揮の下、旅順の要塞攻略に挑むも多くの兵を失って失敗を続けた。攻略の進まない陸軍に対して日本の大本営は苛立ち始める。

本作は歴史上の出来事を題材にしたフィクションであるが、あくまで前線で戦った兵たちの実情をメインにしているように感じられた。

主人公は第3軍司令官の乃木希典であり、攻略が一向に進まず、幾度となく苦境に立たされ、兵士たちの死に心を痛める人間臭さが描かれていました。乃木本人はいっそのこと前線で立って戦って死ぬことを望んでいましたが、周りがそれを許さなかった。仲代達矢が度々見せる目に一杯の涙を湛えた表情が凄く印象的でした。

前線で戦うもう1人の主人公はあおい輝彦演じる小隊長の小賀武志であり、彼の心情の変化を描いた物語としてとても良かった。小賀は元々、ロシアを敬愛しており無用の流血を望まない性格だったが、戦争が進むにつれて、部下たちが次々と亡くなっていき、ロシアを激しく敵視するようになっていった。戦争というものが如何に人格を歪ませ、狂わせていくかをよく描いていた。本作では小賀の部下たちの戦争に出るまでのいきさつが細かく描かれていたため、部下たちが亡くなっていく姿は観ていて本当に悲しかった。

戦争映画として観ると、戦闘シーンが丁寧かつスケールが大きく描かれていて、観ていてもの凄く力が入ったし、迫力があって面白かった。

戦争の悲惨さを描くとともに、戦争というものが色々な思惑によって左右されるものだということがよく分かる作品でした。面白かったと思います。
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