和桜

山河遥かなりの和桜のレビュー・感想・評価

山河遥かなり(1947年製作の映画)
3.7
第二次世界大戦後、ドイツに強制連行された子供たちの救出に苦戦する連合軍。助けにきた兵士の軍服を見て、また同じ目にあわされるのではと恐怖を感じた子供たちは幾度となく脱走を図っていた。
冒頭でそんな背景が示された後、逃げ出した失語症の少年とアメリカ兵が出会い信頼関係を築いていく様子。すれ違いながらもその少年を探す母親の姿がドラマチックに描かれる。

戦後まもなくドイツの米国占領ゾーンで制作されただけあって、写し出される風景や廃虚はセットでなく本物。公共事業を基軸にしたヒトラーの経済政策として有名なアウトバーン建設、いまでいう高速道路の先駆けも写っていたりして、当時の資料としても貴重な映像となっている。

物語としては確かにアメリカ視点の映画ではあるんだけど、実際に起こっていた細かな弊害が丁寧に描かれていて驚かされる。
特に言語の壁は厚く、様々な国から連れて来られた子供たちに対して、その言語を通訳できる兵士たちの存在が不可欠だったこと。しかも子供たちの殆どが心を閉ざしており、軍服を恐れ頷くことしかできない。
当時のドイツでは赤十字もナチス下にあり収容所等で待機していた事から、赤十字のマークがついた救急車がやってくるだけで子供たちは真っ青になる。

形は違えど戦争孤児の現実は今も生み出され続けているわけで、過去の出来事とは言えない切実さを現代にもぶつけてくる。
和桜

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