垂直落下式サミング

モスラ2 海底の大決戦の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

モスラ2 海底の大決戦(1997年製作の映画)
4.0
伝説のニライカナイの古代文明が環境汚染の解決のための生体浄化システムとして生み出した怪獣ダガーラが復活し、人類を敵とみなしてしまう。地球の危機にインファント島の守護神モスラが立ち上がる。
本作は、平成モスラ三部作のなかで唯一ギドラ系ではなくオリジナルの怪獣が敵。この陸海空なんでもござれの魔獣が、モスラに水中戦闘を挑んでくる。
神秘的なニライカナイの海底遺跡は大迫力。巨大な遺跡のなかへと子供たちが足を踏み入れる場面では、巨大怪獣・モンスター映画のそのさらに源流をたどるクトゥルフ神話世界を思わせるような造形が多数登場する。
本作におけるモスラの成り立ちや、ラストのエコロジーメッセージは、平成ガメラシリーズの成功を踏まえているようであり、エコって付けば何でも良いものだった当時の世相を肌感覚に感じることが可能。つーかもう言っちゃうけど、ダガーラはギャオスの設定をパクッている。
ダガーラを倒すために変身するトビウオのようなフォルムのモスラ水中モードはイケメン。三部作のフォームチェンジの中で一番好きだった。しゅっとしたモスラもかわいいね。
本作は、ゴジラの生みの親と言われる田中友幸の最後の仕事でもある。まさに、ひとつの時代の終わりを象徴するようであり、ちょうどこのあたりで、子供たちに一番人気の怪獣は、特撮映画の大怪獣から手乗りサイズのボールのなかに収まるポケモンになっていく。
僕自身も、小学生のころ次第に怪獣映画が「男の子はみんな通るもの」から「好きな子は観に行くもの」に変わっていったのを実感してきた世代であり、同時にポケモンや遊戯王カードのなかに怪獣の美学を見出していった世代でもあるので、怪獣映画の衰退で日本の異形を愛する文化は致命的に断絶してしまったという老害でいらっしゃる方々の嘆きには、そんなことは絶対にないと反論しておく。
本作の怪獣バトルは、「モスラ!ピラミッドを守るのよ!」とフェアリーに乗ったエリアス姉妹が指令を下すと、モスラがその意思に呼応するように行動する様子が印象的で、まさに自分の手持ちモンスターを出し合って戦わせるアクションゲームのようだ。
野波麻帆、満島ひかりの映画デビュー作云々はどうでもいいや。