西鶴一代女の作品情報・感想・評価(ネタバレなし)

「西鶴一代女」に投稿された感想・評価

魅入ってしまった。
少し引いた長回しの画が主人公の人生を傍観している気分にする。
ryosuke

ryosukeの感想・評価

3.8
初見時は近い時期に見た「雨月物語」(個人的オールタイムベスト)によって霞んでしまい、割と長くてつまらないなと思った記憶があるが、やはりと言うべきか見直してみれば十分良作。同じようなエピソードの繰り返しであり、テンポが緩いという感じはまああるが。
序盤で殿様に嫁がされるのを拒否して田中絹代が竹藪を疾走する長い横移動撮影、偽成金が逃走する二階から一階へのワンカット、文吉を捕らえて去っていく男たちの描写、殿様を追って廊下を行く田中とそれを止める部下のシーン等、静謐な時間の流れの中でダイナミックな動きが発生し、緩急になっている。
ファーストシーンで仏像を見つめる田中は客の寄り付かない50代の夜鷹とは思えない輝きを放っているが、これは苦難の中の女こそ輝くという溝口美学の現れだろう。
これに対して、俗悪で欲望を剥き出しにした男たちの醜さよ。娘を売りたいと申し出て布団の中で不貞腐れる菅井一郎、金をばらまく偽成金(柳永二郎)、身請けが決まった瞬間に土下座を繰り返す郭の主人、嫌らしい表情で擦り寄る文吉(大泉滉)、着物を脱ぐ姿に突如催す進藤英太郎等々。また、嫉妬に狂う女も実に恐ろしい。殿様の正妻(山根寿子)、髪を切るよう迫る進藤の妻(沢村貞子)。これらの不届き者に囲まれることで、一人凛としている田中絹代の気高さが際立つ。
しかし進藤英太郎は良いなあ。早口でぶっきらぼう、俗物感が滲み出る口調は正に商家の主人という感じで好演。進藤と加東大介の会話なんてTHE俗という空気感が出て楽しい。
結局夜鷹たちが寄り添い合う姿だけが暖かい。やはり虐げられる者同士の結束こそが固いのか。「世の中なんて何をしても同じ」と言い放ち豪快な笑い声を上げる彼女らの頼もしさ。
化け猫の真似を披露して、「おおきに」となお捨て去れない優雅さを放ちながら去っていく田中絹代の敗残者の誇りが美しかった。
元旦、映画館の梯子。「西鶴一代女」を観て「マチネの終わりに」を観る。
約70年の時を隔てた2本の日本映画は同じような始まり方をする。上手く言えないが、物語るということの意味を考えさせられる何かがある。
前者は田中絹代のお春がそぞろ歩くシーンで始まる。老いた娼婦に身を落とした、その人生の顛末が回想され物語が始まる。終わり近く、まったく同じシーンが繰り返され、観る者は一気にここまでの主人公の軌跡を振り返らされる。
後者は石田ひかるの洋子が街路をひた走るシーンで始まる。ふと石のベンチに気づいて振り返るが、その意味は観る者にはわからない。ここに至る数年間の物語が綴られた後、まったく同じシーンが繰り返される。観る者はここまでの二人の主人公の軌跡を振り返るとともに、そのシーンの意味を覚るのだ。
るじ

るじの感想・評価

3.8
人の一生って長いね
ゆったりと流れるようなカメラワークはこの時代の作品にしては珍しいなと思った。が、それ以外に良さが分からない。

次々と男にまつわる不幸が降りかかる主人公をただ追うだけ。そして主人公はただ悲しむだけ。男に恋したり、迷ったり、立ち向かったりといった様々な感情がほぼ感じられず人間味がなかった。
何かを考えさせられたり、得るものもなかった。

唯一、猫でかつらを奪うシーンだけは主人公が主体的に行動したなと思ったが、他のシーンが全て受身の姿勢なのでこのシーンだけ浮いて見える。
fjk

fjkの感想・評価

3.5
直接的に出来事は映さないけど状況で何が起こったのか察することができる場面が沢山あるし、カメラワークも見惚れるし、画面のレイアウトも見事だし、表現が豊かで素敵な映画だと思った。
お春さんに降りかかる不幸が残酷さ盛り盛りで可哀想だった。いろんなタイプの酷い人間が出てくる。
4K美しいな。
だるいなぁとしか思わなかったが、今回スクリーンで観ると素晴らしい。
田中絹代が一生を2時間ほどで演じ切る。
凄すぎる。
nccco

ncccoの感想・評価

4.2
@早稲田松竹
す、すごい。圧倒された。田中絹代の本領発揮作、迫真の演技とめまぐるしく動いていく転落劇から目が離せない。
美しいが故に運命に翻弄され、波乱の人生を送るお春の一生を描く一代記。あまりにも救いのない話過ぎて、途中から瀬戸内寂聴の小説を読んでいるような気分になってきた。

墜ちていく女に付け入る男たちの糞っぷりももちろんだけど、その男たちと並んで描かれるオンナたちの激しい情念の描きだしもこの映画の奥行きをぐっと深いものにしている。今から髪のつっかみ合いが始まるんじゃないかと思うような大名様の奥方のあのイヤ~そうな顔、商家の奥方の美しさへのコンプレックスとお春への激しい嫉妬。聖女のように見える尼さんだって、お春をあっけなく追いやってしまって慈悲がない。

そんな欲にまみれた人の中においてお春の凄いところは、欲がないところである。性格が良すぎる、受け身すぎる、その軸の無さゆえにコロコロと流れるように流れに流されて気づいたらここまで来てしまいましたという感じで、諸行無常をそのまま描いたような人生。
とはいえ今まで抑圧してきたものがこぼれて溢れ出すように彼女が感情を爆発させる、厭世観を語る後半パートのあの凄み。どこまで墜ちても自分の人生の手綱をぐっと掴んで離さないお春に、いつしか私たちは惹きつけられている。

ぐるっと建物を巡っていく長回しのカメラ、遊郭での俯瞰ショット、カメラワークが素晴らしいのはもちろんだけれど、「いろはにほへと」屏風に代表される一枚絵として成立する狂気的に美しい画面の連続にただただ圧倒される。
オンナの無常を描くのにこれ以上の作品は未来永劫表れないであろう、世紀の傑作。スクリーンで観れてホントに良かった。
DBN

DBNの感想・評価

3.5
正直田中絹代から圧倒的な魅力を感じない限りこの物語には乗っていけないと鑑賞しながら結局気持ちは晴れなかった
歌舞伎や能を思わせるダイナミックかつ横の動きを強調されたカメラに捉えられることで、日本女性のちょっといやな部分を煮詰めましたみたいな田中絹代の好きになれなかった要素が全てこの映画では静謐な迫力のようなものに昇華されており涙が出そうになった。
>|