三従の時代、男に翻弄され続け、夜鷹にまでなった女性の波乱に満ちた生涯の話。
井原西鶴の『好色一代女』をベースとし、溝口健二が製作。
なにより本作の魅力は、映像美と芸術性の高さにあると感じる。
和の世界観を表現するにあたって溝口健二の右に出る人はいないのではと思うほど。
溝口作品は数作しか観ていないが、日本映画の巨匠の中では一番自分の肌に合っていると感じる。
ストーリーは、ひたすら救いがない様を描いたシンプルなものである。
封建社会において、男性の言いなりになるしかない女性という立場でありながら、生来の美貌によって男性に利用され続ける人生。
世継ぎを産めば用無しとして親元に帰され、親からは孝行をしろと島原へ売られ、その後も居場所を見つけては売女と言われ追い出され、最後は夜鷹になる。
見た目だけで男に選ばれ、使い捨てられていく。
信じられないくらい理不尽でやるせない人生なのだが、主人公はやさぐれることもなく、気高い魂のままでいる。
その健気な姿でもって感動を誘おうとするのではなく、現実の厳しさを淡々と描き切ったところが良い。
不幸が続く話ってよくあるが、その本質って何だろう?製作者には何か伝えたいことがあるのか?視聴者にはどんなことを感じる可能性があるのか?
こういう話に触れる度に思う。