イチロヲ

西鶴一代女のイチロヲのレビュー・感想・評価

西鶴一代女(1952年製作の映画)
4.0
諸行無常を実感している夜鷹(田中絹代)が、波乱に満ちた半生を回顧していく。女性が軽んじられる封建社会の悲劇を描いている、ヒューマン・ドラマ。井原西鶴・著「好色一代女」を原作に取っている。

独自の人生設計を立てられない境遇に置かれているヒロインが、幸せ探しと社会的格下げのスパイラルに陥ってしまう。周囲の人々がネガティブなルートへと丁寧にフラグ立てするため、笑いを誘われてしまう。

公開当時42歳の田中絹代が、少女期から中年期までの成長過程を熱演しており、その類まれな役者力に感心させられる。しかし、さすがに少女期は無理があり、良家のお嬢様プレイに興じている、年増のイメクラ嬢のようになっている。

溝口健二が十八番としている「サディスト監督によるサドマゾ劇」を推量することが可能。ヒロインを徹底的に追い詰めていき、「自分と向き合っている状態」を抉り出す。これは、SM映画の緊縛女優のそれと重複させることができる。
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