イチロヲ

フリッツ・ザ・キャットのイチロヲのレビュー・感想・評価

フリッツ・ザ・キャット(1972年製作の映画)
4.0
多人種が行き交うニューヨークにてヒッピー精神を拗らせている青年が、自己のキャパシティを超えた体験を強いられてしまう。ロバート・クラムによる同名アングラ・コミックを映像化している、アニメーション作品。登場人物が動物キャラで描かれている。

主人公の猫は、60~70年代のカウンター・カルチャーを原体験にしている、スノッブな青年として登場。人間の真理を探るためのセックス、自己を変革させるためのサイケデリック体験、自由を手に入れるための反体制運動など、ヒッピー特有の言動が描写される。

本作自体が従来のアニメーション作品に対するカウンターであることは自明の理。全編が「子供に見せてはいけないモノ」だけで構成されており、直線を排した手描き映像が、アメリカン・ドリームの暗部に迷い込んだような錯覚を与えてくる。

「世直し」を期待する若者たちの煮えたぎるエネルギーが、ある種のトランス状態となり、アッパー&ダウナーの渦を巻き起こしているような感覚。若松孝二監督の全共闘映画、70年安保直後のシラケ映画との重複が興味深い。
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