しまかす

告発のしまかすのネタバレレビュー・内容・結末

告発(1995年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

実話に基づいた映画だということを全く知らずに鑑賞。却ってそれが良かったかもしれない。軽犯罪でアルカトラズに収容され、3年間も独房に…というと確かに酷い話なのだけれど、ヘンリー・ヤングが脱獄を試みたこともまた真実。殺した相手が脱獄の共犯者だったにもかかわらず、聴取の際にその経緯へ触れることすらなく、最後までモヤモヤした気持ちが蟠ってしまった。

伸び放題の髪にガリガリの身体、独房で手を括られ鞭打ちに遭うヤングの姿はまさにイエス・キリストそのもの。
史実での本人については映画のように虐待されて死んだという説と、裁判後アルカトラズではない刑務所に移され出所、消息不明という説の二つがあるらしい。
そもそも、「刑務所に戻るぐらいなら死ぬ方がマシ」と嘆く男の姿を見て陪審員は無罪判決を下しているのに、アルカトラズに戻すという展開は理解できなかった。
副所長が即解任されているわけでもなし、戻ったところで悲惨な目に遭うことは明白なのに…てっきり陪審員は他の刑務所への移送を提言するものかと。
勝利と友情を手にしたといえば聞こえはいいけれど、勝負に勝って試合にゃ負けている。
たとえそれがどんなに意義のある死だとしても、他の囚人たちが苦しみから解放されようとも(ヤング以外の囚人が非道な仕打ちを受ける描写はなかったが、ヤングが“罪”を引き受けた形か)、キリストのような復活劇は決して起こらないんだ。

とはいえ、ケヴィン・ベーコンの怪演ぶりは非の打ち所なし。これまでカッコいいケヴィン・ベーコンしか観たことがなかったこともあり、『カッコーの巣の上で』のジャック・ニコルソンを彷彿とさせるような怪演にただただ目を奪われた。奥さんとの共演にも驚き。


あんたと俺とはいったい何が違うんだ。
そう言って涙を溢すヤングのシーンが一番苦しかった。

『私はありとあらゆる犯罪者に対して、自分とは無関係だとタカをくくってはいられない。私がしたかもしれない、あるいは今後するかもしれない犯罪を、彼らは私に代わってしてくれたように思う。神谷美恵子の言葉を借りれば、「なぜ、私ではなくてあなたが」という疑問は消えないのだ。』

中学生の頃に何度も何度も読んだ本の中でとある哲学者が語っていた言葉。
先日偶然この文を目にする機会があり、思うところがあったので併記しておく。

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しまかす

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