ryok0913

FAKEのryok0913のレビュー・感想・評価

FAKE(2016年製作の映画)
5.0
真実と表裏一体に存在するのは、虚構だ。

情報が氾濫する世の中で、
受け取った情報が
真実であるか虚構であるかを判断するのは
情報の受け取り手次第である。

しかし情報の伝え方もまた、
メディア次第だ。

メディアは情報を自分たちの
都合の良い形に変化させる事が出来る。

具体的には、
例えばテレビでは演出やBGMやテロップを挿入する編集によって
被写体を悪人に見せたり善人に見せたり出来る。

ゴーストライター騒動の時、確実に
佐村河内守氏は、悪人として描かれていた。

業火の責め苦の中で喘ぐ罪人を嘲笑うかのような
報道が連日されていたのは記憶に新しい。

道徳観念で云えば、
人を欺く事は当然罪深い事だ。

その上で佐村河内守氏は
人々を欺いた代償を払うべきでもあろう。

しかし、ゴーストライターと知った途端に
手の平返しでバッシングするメディアに
公平性もへったくれもない。

メディアがバッシング合戦を繰り広げる時、
バッシングの渦中の人間の本質にまで切り込んで
報道する媒体は、ほぼ皆無に等しい。

大上段に構えた言い方をさせて貰えば、
その本質にまで切り込んで人々に伝える事が
ジャーナリズムではないのか。

その本質を、この映画は見せてくれた。

しかし、結局のところ、
この映画を見終わった今でも、
映画の内容が本当のところ
FAKEなのかREALなのかは、わからない。

ホロッとさせられるシーンもいくつかあったが、
もしそれが全部演出(ヤラセ)の上で作られていて、
その上での映画のタイトルが「FAKE」だとしたら、
それこそお見事とも言えるが…

映画には、森達也氏が佐村河内守氏(そして奥さんと猫)と
向き合う姿が映っている。

少なくとも、その姿には微塵も虚構は見受けられなかった。
ryok0913

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