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FAKEのbのレビュー・感想・評価

FAKE(2016年製作の映画)
4.2
正直この映画を観るまで、佐村河内さんの一連の騒動にあまり興味を持ったことはなかったので、メディアの一面的な報道を鵜呑みにしてきた自分がいました。なので大変お恥ずかしながら「笑って良い対象」としての佐村河内さんしか知りませんでした(野々村さんも....)。 そして、そのアンチ佐村河内的な報道により、既に掛かってしまったバイアス抜きに物事を考えられないという状況は非常に由々しき事態だと思います。

本作は出来るだけ佐村河内夫妻に寄り添い、「側からしか見えない真実を、あくまでも客観的視点で提示しようとする」という体で進みます。
しかし、ドキュメンタリーの特性上というべきか、観てる最中にいくつかの懸念が浮かびます。カメラの前で被写体はどこまで素を見せているのか?もしくは真実を語っているのか?我々観客にはカメラに映ってる情報でしか判断出来ないという状況は公平と言えるのか?
そして本作はそういった観客にとって不利な状況は最後まで覆されることはないのです(全てのドキュメンタリーに言えることですが)。
そうして考えると本作のやってることは、ある意味でこれまでTVや雑誌等のメディアがやってきた事と実は変わらない気がしてきます。カメラを通して見せられるあらゆる出来事には、最初から客観性は存在せず、主観的解釈だけがそこにあるのではないでしょうか(そもそも映画は編集という手が加えられたものでもありま寿司)。いわゆる信用の出来ない語り手的といいますか。
つまり、ドキュメンタリーに真実を求めること自体間違いなのかもしれません。結果的にドキュメンタリーの在り方ひいてはメディアの在り方を考えさせられました。

衝撃のラスト12分間というのもなんとなく圧倒はされるけど、なにがなにやらで、最後まで煙に巻かれてしまったような気分に陥りました。

当たり前のことですが、多面的で先入観に囚われない情報精査を改めて心掛けていきたい。
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