Mikiyoshi1986

ジンジャーとフレッドのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ジンジャーとフレッド(1985年製作の映画)
3.7
本日10月31日はフェデリコ・フェリーニ監督の23回目の命日。
生きていれば96歳になります。

晩年のフェリーニが自身の常連俳優マルチェロ・マストロヤンニと公私のパートナーでもあるジュリエッタ・マシーナをW主演に迎えて製作した意欲作。

クリスマス特番の出演を依頼された元モノマネ芸人のジンジャーと、30年前に別れた相方フレッドがテレビという媒体で再び共演を果たす一日を描きます。

かつて二人が活躍した芸能の世界はすっかり姿を変え、時代はテレビが世の中の娯楽を牛耳る昨今。
こけおどしのように雑多に取り繕われたテレビ業界の暗部をこき降ろしながらも、その中で懸命に輝かしい青春の瞬間を取り戻していく二人に胸が熱くなります。

常にイタリア社会の退廃を作品に取り入れてきたフェリーニですが、テレビに対しては並々ならぬ異議があったようで、思えばかつて皮肉満載のクリップ短編集も残していましたね。(IVCデジタルリマスター版「甘い生活」の特典ディスクに収録)

老いた二人が如何なる状況であれ有終の美を飾ろうとする芸人魂は、晩年のフェリーニが映画監督として常に抱えていたテーマでもあっただろうし、特に相棒ニーノ・ロータを失った彼にとって(キャスティング面から見ても)本作は強い大志を持って挑んだように思います。

変わってしまったもの、そして決して変わらぬものをフィルムの中に丁寧に収めたフェリーニの思いは観る者の心にきっと伝わるはず。
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