MASH

東京流れ者のMASHのレビュー・感想・評価

東京流れ者(1966年製作の映画)
4.0
国内以上に国外での評価が非常に高い本作。渡哲也のヤクザ映画がなんでと思っていたら、監督が鈴木清順。まぁ普通の映画ではないんだろうなと思って観たが、予想以上にヘンテコな映画だ。『殺しの烙印』よりは分かりやすいが、画作りやストーリーの繋ぎ方、ジャンルのゴチャゴチャ加減はやっぱり戸惑うレベル。

だが、単に変な映画で終わっていないのが面白いところ。流れ者や任侠モノといった使い古されたジャンルを分解し、そこから様々な演出方法やジャンルで自由に繋ぎ合わせている。任侠モノ、活劇モノ、西部劇、コメディ。更にシュールリアリズム的なセットやコントのようなセット、そこに東京のネオン街を色鮮やかに挟み込む。映し方も真横からだったり真上だったりと、既存の映画から大きく外れている。どこか市川崑の『雪之丞変化』を思わせる画面作り。ものすごく不思議だが、どこか引き込まれてしまう。

これだけ自由でありながら楽しめるのは、監督がその場面でやってみたいことがハッキリと見えてくるからだろう。実際ストーリー自体も仁義や人情を信じていた主人公が裏切られるという、時代の変化を捉えたものになっている。それがこの映画における脱構築と重なり、見事に一つの作品として成り立っているのだ。やはりこの頃の日本の映画は色んな意味で飛び抜けていると感じられる一作。
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