ハンダゴテゴテ

東京流れ者のハンダゴテゴテのレビュー・感想・評価

東京流れ者(1966年製作の映画)
3.8
「東京流れ者」は色彩表現を巧みに使ってキャラクターの特性や関係性の変化を映像で演出している。
まずモノローグ,ハイコントラストのモノクロでヤクザ世界の暴力性を強調しているのだが,唯一主人公テツが線路に落ちているのを見つける玩具の銃だけが赤いパート・カラーで着色されている。これはこの映画の主軸となる銃を捨てたテツが再びそれを手にするのかということを端的に冒頭で提示する役割を果たしている。次に本編が始まるとカラー映像になる。この映画ではメインとなる人物や複数あるヤクザ事務所にそれぞれ基調となるカラーが定められている。これにより,大人数での混戦するアクションでも主人公がどこにいるのかが識別しやすく,またメインのキャラが誰なのかが登場した時点で感覚的に把握でき,ストーリーの中のキャラクターの関係性を分かりやすく整理する効果を生んでいる。そして最も色彩表現が効果的に用いられているのがラストシーンである。敵側の部屋は暗く,色としては黒に見える。そこからカメラがトラックして壁を超えると真っ白の廊下を正面に向かって歩く白スーツのテツ,そしてテツが部屋の入ってくると同時に光が差し込み,暗い部屋が明るくなり,色が白になる。これはまさに黒=悪の世界に一人乗り込んできたテツ=白=正義の表現であり,テツの衣裳替えも含めてクライマックスにふさわしいインパクトを色彩表現によって生んだ名シーンだ。