イチロヲ

午前中の時間割りのイチロヲのレビュー・感想・評価

午前中の時間割り(1972年製作の映画)
3.5
旅の途中で友人(国木田アコ)を亡くした女子高生(シャウ・スーメイ)が、自分たちで撮影を続けていた、8ミリフィルムを映写する。シラケ突入時の内面的葛藤を描いている、ATG謹製のヒューマン・ドラマ。

いわゆるひとつの「生き甲斐を見失った少女が、自分探しの旅に出る」系統の作品。現実世界(束縛された世界)をモノクロ、8ミリの世界(開放された世界)をカラーで描写しており、ふたつの世界を往来しながら物語が展開していく。

まるで、1972年の空気をそのまま閉じ込めている、真空パックのような作品。台詞演技が拙いため、自然体とは言いづらいが、ふたつの世界の温度差と荒木一郎監修の楽曲により、独特の雰囲気が作られている。

70年代初頭の世相・風俗が封じ込められているため、資料的価値を見いだすことが可能。チェコ映画「ひなぎく」との類似性も興味深い。なお、主演の国木田アコは、明治期の作家・国木田独歩の曾孫だったりする。
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