イチロヲ

バルカン超特急のイチロヲのレビュー・感想・評価

バルカン超特急(1938年製作の映画)
5.0
ヨーロッパの大陸横断超特急に単身乗車することになった令嬢が、同乗していた老婦人の失踪事件に肉薄していく。エセル・リナ・ホワイトの小説を映像化している、サスペンス映画。

老婦人の存在を知る人物が、令嬢一人だけという異様な状況。多様な乗客たちの境遇に触れながら、人間不信と自己矛盾の深みへと嵌っていく。冒頭では足フェチ視点が収められており、「さすがヒッチコック!」と早くも膝を叩いてしまう。

何よりも、「私の人生に残されたのは結婚だけよ!」と宣っている令嬢が、急転直下と雲散霧消を体験するところがユーモア満点。列車内に「恐怖と喜劇と冒険」がバランス良く配置されており、呉越同舟へと集約していくドラマ展開が、とにかく気持ち良い。

余談だが、筆者が水野晴郎監督「シベリア超特急」に関心をもったのは、本作のパロディであることを即座に察知したからに他ならない。おかげでシベ超の第1作目を公開当時に鑑賞するという、稀有な体験を得ることができた。ありがとう、バル超!
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