イチロヲ

宵待草のイチロヲのレビュー・感想・評価

宵待草(1974年製作の映画)
5.0
反体制組織に属している青年(高岡健二&夏八木勲)が、誘拐被害を受けた令嬢(高橋洋子)の保護を契機に、右翼と左翼の両団体から狙われる立場になってしまう。アメリカン・ニューシネマを大正デモクラシーに置き換えている、冒険活劇ドラマ。

本作の主人公は「革命家の理念とは何ぞや?」という問題提起に直面している青年。娯楽と退廃が混在する、モダンでハイカラな世界観が構築されており、気球、車、サイドカーなどを駆使しながら、「場の移動」を繰り返していくところが単純に面白い。

姫田真佐久による長回しも健在であり、蒸気機関車の発着シーンが見どころ満点。映画撮影隊のシークエンスは、後年のロマンポルノ「黒薔薇昇天」を想起させるものがある。ただ、登場人物が唄をうたう演出がクドイので、鼻白んでしまう側面あり。

ラストのでんぐり返しは、悪天候のため機関車が運休になり、即興演技に変更された結果によるもの。脚本通りに進められなかった心惜しさがあるけれど、真っ白な吹雪が退廃芸術のような映像を作ってくれているので、結果オーライ。
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