津軽系こけし

或る夜の出来事の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
4.5
愛こそ


あらゆるもののはじまり
映画史で最も功績を残した作品として今なお有識者たちの議論を絶やさない。

スクリューボールコメディの定義化はもちろん、コロンビアピクチャーズを大成し、トーキー映画のパーソナリティを軸立て、現代ロマンスの基盤を築き上げた。

今作に映される反スノッブ精神と、経済事情の玉砕は、明らかにウォール街大暴落下の人々を意識したものであり、それは時代柄の必然が生み出した作品という一面ものぞかせている。
しかしながら、今作はそれ以上に人情劇としての完成度も高く、役者陣の魅力も悪夢的である。台詞量は飛び抜けているのに説明的なところはなく、むしろ視覚的な描写に感情模様を任せている。だから、我々は2人の心情を曖昧に感じとっているからこそ、滑稽な会話劇にそこ抜けた愛くるしさを覚えるのである。もちろん、その愛くるしさも2人の俳優あってのものである。特にモノクロを通したクローデット・コルベールの美しさは筆舌尽くし難い。

人類史に現れるべくして現れた創作物だと思う。なぜか我が家にdvdがあって何気なく視聴したが、予期せぬ出会いもあるものだ。せっかくdvdがあるのだから、目に焼き付けまくるのが慎みであろう。
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