ほーりー

或る夜の出来事のほーりーのレビュー・感想・評価

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
4.4
ハリウッドのラブコメの礎を作りあげた作品。「極楽特急」「今晩は愛して頂戴ナ」「晩餐八時」とか既にあったが、ほとんどヒットした舞台劇の映画化で、こっちは短編小説を原案としたほとんど映画のオリジナル作品。

以降の作品に多大な影響を与えた作品だが、特筆すべきは主役二人のキスシーンを描かずにラブコメとして成立させている点!のちに「アパートの鐘貸します」でもキスシーンなしで男女の恋愛を描いたが、本作はその四半世紀前の映画である。

冒険家との結婚を大金持ちの父親に反対された令嬢(クローデット・コルベール)は、家出して長距離バスに乗って彼のもとへ。そこにたまたま居合わせたのが、編集長からクビを言い渡された新聞記者(クラーク・ゲーブル)だった。これを境に二人の奇妙な旅が始まる。

本作が史上初、アカデミー賞主要5部門(作品・監督・主演男優・主演女優・脚本)を受賞した映画であり、それ以降では「カッコーの巣の上で」と「羊たちの沈黙」だけしか成し遂げていない。しかし、監督のキャプラは、製作中はまさかこんな大傑作になろうとは自分でも思っていなかったという。

当時、コロンビア映画は弱小スタジオであり、自社でスターというべき人材がいなかったせいか、MGMからゲーブルを、パラマウントからコルベールをそれぞれ借りていて、主演二人も当初はしぶしぶの出演だったようである。

ところが撮影中にゲーブルがキャプラの仕事ぶりを見て、「おい、あのイタリア野郎は違うぞ」と思ったそうな。その予感が的中し、批評的にも興行的にも映画は大成功をおさめることになり、コロムビア映画も一躍メジャー・スタジオの仲間入りすることになるのだった。

ただキャプラ自身は思わぬ大成功で、かえってプレッシャーがかかってスランプに陥ってしまい、2年後の「オペラ・ハット」の成功までは大変な時期を過ごしていたそうである。
ほーりー

ほーりー