三四郎

或る夜の出来事の三四郎のレビュー・感想・評価

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
4.8
完璧な名画ここにあり。ロマンチック・コメディの最高傑作。
父親の意に添わぬ結婚をしようと考えているおてんば娘。娘が星一哲張りのお盆返しで朝食を台無しにして言うことを聞かないので、父親 思い余って最愛の娘に手をあげる。ハリウッド映画でなかなかお目にかかれぬ娘への平手打ち。今まであったかな?

ゲーブルのこのセリフには唸らされた。
「金はいらん(心配ご無用)やはり思った通りだ 甘やかされて育ち 何でも金で買いたがる 金ですべて解決できると考えてる 人間らしさのカケラもない „困ってるの 助けて“となぜ言えない?気取るのはやめろ 素直になったらどうだ 懸賞金にも 君のトラブルにも関心はないね バカな金持ち一族なんかどうでもいい」

夜のバス発車まで一日何してたか聞かれ、
「人目を避けて雨宿りしてたの」
箱入り娘が初めて下界に立ったのだ。世間知らずのお嬢ちゃんがニューヨークまでの旅で様々な社会経験を積む。ゲーブルに保護されながらだが、大人になっていく。彼女は人助けをする思いやりのある女性だが、ただやはり金持ちのお嬢ちゃんだからこそ何も考えずできるのだ。少年に渡した紙幣はゲーブルのなけなしの金だし笑

「毛布一枚で私の安全は守られるの?」
ジェリコの壁に脱いだ下着をかけていく、そして壁は揺れる。なんてエロチックでセクシーな描写なんだろう。

ゲーブルは名前を聞かれ、
「俺か?夜は力強いタカ 朝は愛らしい君の頬を撫でる風さ」
お嬢ちゃんそれをおもいっきり聞き流し
「名前は?」と催促、そして「嫌な名前」笑
「今夜は君も同じ名前だぜ」夫婦と偽って泊まっているからだが、笑える。
クローデット・コルベールのハマり役だな、バカっぽく子供っぽくて愛らしい笑 決して美人でも可愛くもないのだがおもしろい!この役、他の女優さんではこれほどうまくいかなかっただろう。

ヒッチハイク場面は世界映画史に残る名シーン中の名シーンだ。そして物語が進むにつれだんだんとお互い惹かれていく。
「恋をした経験は?恋に憧れたことは?あなたは女性をとっても幸せにできる人よ」
「人並みに夢は見たさ 愛する女に出会えたらと…だが本当にいるのかな どこを探せばいい? そんな女はいない 恋に憧れたさ」 この後からが実にいい。時間がなくて書きとれなかったが…男はsehr romantisch に描いていた将来の夢を語るのである。愛する「女性」を夢見ながら。そして、彼の夢物語に連れてってと箱入り娘がジェリコの壁を涙に濡れし瞳で越える。
ラストは我慢できなくなったゲーブルが娘の父親に催促の手紙。そしてついに!ジェリコの壁ついに崩壊!
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