Shelby

或る夜の出来事のShelbyのレビュー・感想・評価

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
4.7
セックス・アンド・ザ・シティ2のビッグが〝JACKPOT!〟と喜んでこの映画を見る姿がとても印象的だったので、気の向くままに借りてみたが。
個人的にこの作品、大好きです。
好みにドンピシャな上に、むず痒くなるほどのロマンティック・コメディの傑作。

大富豪の娘エリー。お転婆で世間知らずな彼女は父から結婚を反対されてしまい、愛する彼の元に向かうべく追っ手を巻きながらニューヨークへと向かう。その道中知り合った記者ピーター。彼女の正体をいち早く見破り独占取材を書くため彼女の旅に同行する。数時間で着くはずだったニューヨークへの旅は立て続けに起こるトラブルにより
中々到着できない。チグハグだった二人の仲も、徐々に距離を縮めていく。

機転の利く男だが、なんとも口が悪いダンディなツンデレ紳士ピーター。亭主関白さを出しつつも結局はエリーに滅法甘い。エリーのワガママにもなんとか応えようとする姿が愛おしくて愛おしくて。なんだかんだ言っても優しい彼の姿に女性はキュンとくるはず。ツンケンしていたエリーも徐々に心を許し始め、二人のやり取りは一緒にいる時間が長くなるほど息がぴったりになっていく。主にヒッチハイクでピーターが持論を繰り広げるも1台も車が止まらない中、エリーが足を晒すだけで車を捕まえることが出来るくだり。そして、エリーを担いで川を渡るくだりが最高に面白い。ラストで律儀に守っていた〝ジェリコの壁〟を崩すシーンはにやにやが止まらない。

ロマンティックさで忘れてしまいがちだが意外にも、横恋慕で成就した愛なので心象はあまり宜しくない。そして何よりウェストリーが不憫でしかないのだが、この映画では一切の湿っぽさは排除されている。だからこそ一貫して二人の世界に入り込める訳なんだけれども。

鑑賞後この映画について調べていると、後にピーターが生のキャロットを齧る姿はバックスバニーのモデルになったとの情報が。
また、女性が男性物の衣服を身につけることによりぶかぶかな格好で愛らしさを誘う姿はこの映画が元ネタなんだとか。色んな方面で影響力のある作品だった模様。

コミカルで痛快。そしてピーターのアイロニカルな物言いがまた癖になる。音声の粗雑さが古めかしさをより一層際立たせるが、白黒映画の良さを思い出させてくれた。
Shelby

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