Ricola

遠い雲のRicolaのレビュー・感想・評価

遠い雲(1955年製作の映画)
3.6
初恋とはどんな形でも忘れられないものだろう。

再会した若い二人。かつて思い合っていたのだから、思いが再燃するのも一瞬であった。


田舎町で裕福な婚家に住む若き未亡人冬子(高峰秀子)と、東京で林野庁に勤めるエリートの男の圭三(田村高廣)。

思いを抑え込む冬子と、対して自分の思いに素直でぶつかってくる圭三。
二人の気持ちは同じはずなのに、とる態度が違うのは背負っているものが違うのは明らかだろう。
だからこそこの恋模様は切なくなる。
田村高廣かっこいい…。

気持ちを抑えるといっても、冬子の彼からの誘いに揺れ動く気持ちが、表情や仕草などに表れていることがわかる。
それは、買ったばかりの小包を落としてしまい、さっきまで彼が観ていたジャズショーに場面がパッと切り替わる。

冬子の妹の未練とそこから解き放たれるタイミングは謎だったが、二人の周囲の反応など、それぞれの心情もよく伝わってくる。
やはり女性は噂に敏感だし怖い…。

冬子の義弟の俊介(佐田啓二)の存在は大きい。穏やかな性格ではあるが、彼の内なる強さを感じられるところがあった。

名優の競演にワクワクしたが、ストーリーや演出にそこまで斬新さは感じられなかった。
ただ人物描写は丁寧で、二人のすれ違う思いにはドキドキした。
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