ジェイコブ

トゥルーマン・ショーのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ホームレスもいない、平和で理想的なアメリカの離島シーヘブン。そこで暮らす保険会社社員のトゥルーマンは、明るく幸せな生活を送っていた。彼は様々な理由から、生まれ育ったその島を出たことがない。いつか冒険の旅に出たいと願う彼を妻のメリルや周りの人々は過剰なまでに止めようとする。トゥルーマンが繰り返すだけの日常に疑問を抱き始めた頃、彼の前に死んだはずの父親が現れる……。
マスクで知られるジム・キャリー主演作品。テレビ番組の企画で、生まれてからずっと、テレビにその姿を晒し、何一つ嘘偽りのない人生を送らされる事になった男トゥルーマンの数奇な物語。コーエン兄弟を思わせるような一見間の抜けたように見える人々の持つ、狂気的な一面が露になるシーンが恐ろしくもコミカルに描かれている。それは、トゥルーマンが苦手とする犬や海を障害物として用意して島から出ないように仕向けたり、さりげない情報操作によって洗脳していく様子をテレビで見世物にするなど、最早笑えてくるほど途方も無い狂気笑。
彼が島から出ようとするのを必死で止めるためにあらゆる手を講じる番組側、あからさまな商品の宣伝など、笑えるシーンの割合も多いのが特徴的だが、リアリティショーを作る上で一人の人の人権が踏みにじられ、耐えきれなくなった出演者が自死を選んでしまう悲劇はテラスハウスなどを代表とする現代の恋愛リアリティショーでも多数起きている事を考えれば、あながち笑い事ではない。そう考えたら、「水曜日のダウンタウン」のクロちゃんを楽しむ視聴者もまた、この映画の登場人物の一人と言える。
本作のラストは「おはよう! そして会えない時のために、こんにちはとこんばんは!おやすみ!」とトゥルーマンおなじみの台詞で幕を閉じ、トゥルーマンショーを見ていた視聴者が余韻に浸りながらチャンネルを変えて終わっている。これまでの流れを考えたら些かモヤっとするラストだが、これは、トゥルーマンのこれからの人生は彼だけの物語であり、誰にも邪魔をさせないようにするため、敢えて凝りを残した意図があるのだろう。自分の人生は自分で決め、運命は自らの手で切り開く。これは永遠不変のテーマといえるが、本作は当時としてはそれを少し変わった手法で描いた異色の作品だろう。