Kaori

トゥルーマン・ショーのKaoriのネタバレレビュー・内容・結末

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

最初からすごく不気味で怖くて、笑顔と明るさの中にある不気味さとかそれを感じたことのある人にしか分からないような世界の見え方を、映像と音と表情で表現できてるのが本当にすごかった。

哲学的な話で、プラトンの洞窟の話と同じで、わたしたちの見ている物、世界は本当に全部本物?本物じゃなかった時それを見たいか、また見てしまった時、そこから出ていく勇気はあるのか。
ずっと考えがぐるぐるするこの質問。私は本当を知りたい。知った上で自分で選択したい。とずっと答えてきた。でも大人になるにつれ、それがどれだけ怖いことかも分かってきた。アイデンティティを無くす、壊すっていうこと、それは大人になるにつれて難しくて怖いことなんだよな〜。
今の自分の幸せが、秘密で守られてる上での幸せだった時、真実を見て、受け入れて、外に出ていく勇気は私にあるのかな。
Truemanにはその勇気があった。彼のいつもの笑顔、ずっと心に何か引っかかっているのに、人に作り笑顔をして毎日が心の底から幸せな演技をする。
その面では彼は本当にshowmanだったのかも知れない。
彼の人生をずっと見てきた人達の反応もすごく比喩的で良かった。
他人の人生をSNSで見る毎日。見る側はショーを見てるみたいに、発信してる側は全てを幸せで綺麗な瞬間であるように見せる。でも結局は他人の人生なんて心の底から自分で共感してるわけでもない。
ただ本当にテレビを見るみたいに、人の苦しみ、楽しみを見て、好き勝手に意見を言って、誰もその人の心は考えない。そしてTruemanshowが終わった後すぐに、番組表は?って切り替えるあたり、
すごい現代に当てはまるんじゃないかなって思った。

それでも彼は最後に、
"in case i don't see ya. good afternoon, good evening, and goodnight"
と心の底から、今までとは違った意味で口にすることで自分自身をもう囚われることなく自由にした。
きっとこの先彼の、昼も、ゆうがたも、夜も、テレビの前で見る人はいない。
その自由を手に入れた後のこのセリフは心にぎゅーってきた。
Kaori

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