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トゥルーマン・ショーのメタのレビュー・感想・評価

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
4.5

「会えない時のために。こんにちは、こんばんは、おやすみ」



こんなセリフが口癖の主人公。見ている私たちにとっても、とても印象的なセリフになっていく。演じるジム・キャリーの笑顔も強烈なインパクトを残す。

自分の生活のどこかがおかしい。
主人公は、徐々に気づき始めてしまう...


もしも自分の人生が仕組まれたものだったなら。誰かが作った脚本の世界だったら。この事実に、徐々に気がついていくトゥルーマン。彼の心情を考えると、とても恐ろしい。この映画をトラウマ映画に上げる人の気持ちもよく分かる。

映画の登場人物たる彼が、主催者たるゲームマスターに反旗を翻す。この構図は、創造主たる神に人類が物申すことに似ている。これは、あらゆる宗教で繰り返し描かれてきた図式だろう。このメタ的な構造・主題を、この映画は、エンターテイメントとして観せてくれる。



主催者であるテレビ番組「トュルーマンショー」のプロデューサーのクリストフ。彼は、トュルーマンの一生を最初からデザインし、自分の思いどおりのショーを作り上げようとする。最後の最後まで、自分のショーを完成させるために、トュルーマンを説き伏せようと試みる。ずっと見守ってきたプロデューサーは、本当にトゥルーマンの身を案じていたのだと思う。子を見守る親のようにだって見える。

そんな彼の口から出る言葉は、まるで社会という檻に囚われている私たちに向けられる言葉のようだ。「外の世界に出ることが、本当にいいことなのか?」この問いは、私たちにこそとても刺さる。

そんな彼の注意を受けた、トュルーマンの返答が素晴らしい。この映画の名シーンだと思う。自分のこれまでの人生が幻想という絶望、その先に見えかけている希望、この狭間という極限状態において彼が発したメッセージはとても意外なものだった。
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