蜘蛛マン

トゥルーマン・ショーの蜘蛛マンのレビュー・感想・評価

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
3.9
この映画を最初にコメディに分類した人は、けっこう強烈なブラックユーモアの持ち主だと思う。
脚本を書いているアンドリュー・ニコルは、社会や常識や思考の枠組み自体を疑ってかかるみたいな社会学的な考え方をする人な気がしてかなり好みです。

世界の虚構と自意識の操作に気付くトゥルーマンだが、翻って、映画を観ている自分はどこまで世界を真だと言い切れるだろうか?
「自分の考え」や「世界認識」なんてものは、本当に存在しているのか?
フーコー風味で言えば、自分の属する時代のエピスメーテーのなかで、生権力に気付きもせずに捕われながら、そのように自分は考えていると、無意識に思わされているだけではないのだろうか?

世界は頭の中にこそある。
トゥルーマンはラストで「頭の中にカメラはない」と言う。たしかに覗かれる心配はないが、自身が世界を映すカメラ自体が、世界から渡された既製品なのではないかとも思う。
トゥルーマンがくぐり抜けた扉の先の世界に、希望ばかりが待っているとはどうしても思えない、根暗なワタシが悲しい。
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