テイアム

キャリーのテイアムのレビュー・感想・評価

キャリー(1976年製作の映画)
3.8
若い時、好きな女性のタイプを聞かれて、キャリーみたいな子と言ったらすごく引かれた苦い記憶がある。でもキャリーって、怒らせなければ素はとても可愛い子なんだよね。色白で華奢、薄幸な雰囲気と、本が好きだったり健気な性格、控えめな服装と口元が印象的なあの笑顔には個人的には好印象しかないし、プロムでの彼女は文句なく1番だし、何より化粧品店で一心不乱に口紅選ぼうとしてる姿にはいつもニコニコさせられます✼
サイコキネシス使えるとか最高だしね。
しかしそこに立ちはだかるキリスト教原理主義者の強権的母親の抑圧と、その対抗軸としての悪の象徴たる性欲、嫉妬、暴力を体現する同級生たち。両極端に板挟みのキャリー。
物語はまるで若い時にいい思い出のない引きこもりの作家が当時の恨みつらみを込めて『お前らみんな皆殺し』とばかりに歪んだ復讐心で書いた妄想のようなお話だが、キャリーの純新無垢な人間性と周囲との極端な断絶が私たちを自然な形でキャリーに感情移入させる。プロムでの長回し高速回転ダンスシーンではキャリーの幸せそうな表情とこれから起こる不幸な出来事が私たちの脳裏で自然と対比され、彼女の感情の高ぶりとは裏腹に胸騒ぎが止まりません。
そして印象的なスロー演出の中で最悪の仕掛けがキャリーを襲い、豚の血で顔を染めた彼女と、劇中最も美しいと評された、激しく立ち上がる炎の中に浮かぶ彼女の細身のシルエットを目の当たりにした時、私たちは今まで感情移入していたキャリーからもすでに置き去りにされていたことに気づきます。分割画面が多用されてテンポよく展開していく様は“デ・パルマ感”というか、待ってましたと言いたくなりますね。
彼女を正しく導こうとする先生の奮闘も虚しく、リア充とその他大勢は全員死亡。彼女は最後に、彼女にとって最も強大な壁であった母親との対峙の後に文字通り地獄に堕ちる。この母親について私は『全て母親の言う通りだった』『性に誘惑され結果的に多くの命を奪った悪魔のようなキャリーをキリスト的シンボルの母親が自己犠牲により打ち破った』などと絶対に解釈しない。それだけで肯定できるような前向きな母親像ではない。
しかし最後の母親とのシーンは音楽の効果もあって、いつ観ても辛いものがある。やはりキャリーには母親しかいなかった。

暴力や復讐の肯定は許されてはいけないのだろうが、それは口に出して言えないだけで、私たちは必要な時があることを知っている。
キャリーへのイジメや躾が度を超えていくにつれ、こいつらは罰せられなければならないという感情が高まったことは誰も否定出来ないだろう。

改めて観たけど、やっぱり私はキャリーが好きです✼