Ricola

バンド・ワゴンのRicolaのレビュー・感想・評価

バンド・ワゴン(1953年製作の映画)
4.8
豪華なパフォーマンスと名曲揃いで、名作ミュージカル映画の一つであることは間違いないだろう。

最後に観たのは3年前で結構内容は忘れていた…。(ちなみにこのレビューは再投稿。)


とにかく良質なエンターテイメントの連続で、とても楽しかった!

今は落ち目の、かつてのミュージカルスターという役どころは当時のフレッド・アステア本人そのもの。
そこをちょっと皮肉るような、列車の中でのおじさんたちの会話に、アステア演じるトニー・ハンターが割り込んでいくという彼の登場の仕方がいい。

とにかく明るいストーリーで、前向きな気持ちになれる。そこに無駄な現実の厳しさや、ストーリーの流れの几帳面さなんかは問われる必要はない。
難しいことは考えずに、ただ目の前の素晴らしいショーをただ享受することが、こういった作品を観る上で必要なことであろう。

主人公のキャリアとしての成功と恋愛成就が、ストーリーの軸にあるという意味では、往年のアステア&ロジャース作品に観られるロマンティックコメディの同じ型である。

ただやはり、カラーの良さを十分に味わい尽くせる鮮やかな色彩のきらびやかな衣装や、パフォーマンスがより楽しめる。

安定のアステアのパフォーマンスは感動ものだし、シド・チャリシーのスタイルと唯一無二な存在感にはやはり目を見張る。本当に彼女の脚長い。


やはりGirl Huntのシーンの完璧さに惚れ惚れしてしまう。
ミステリアスでセクシーなショー。そのダンスの素晴らしさだけでなく、奇抜な演出にも目を引く。
それは、舞台のはずなのにぐるぐる画面自体を回転させてしまう思いきった「映画」であることを強調する演出である。
まるでトニー自身がこれは舞台ではなく、その体験をしていると錯覚に陥らせ、拍手がなるまでその効果を持続させるのだ。

もちろん他の歌やダンスのシーン全てが魅力的である。
特に好きなのは、A shine on my shoesのシーン。
靴みがきとアーケードのゲームの動きをうまくダンスに取り入れ、その寄り道をしているが無駄のない、リズミカルなダンスにワクワクする。

何度でも観たい、大好きなミュージカル作品のひとつである。
Ricola

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