みおこし

バンド・ワゴンのみおこしのレビュー・感想・評価

バンド・ワゴン(1953年製作の映画)
4.0
ミュージカル史に燦然と輝く一本、ようやく鑑賞しました。『雨に唄えば』『掠奪された七人の花嫁』『カラミティ・ジェーン』と並び、個人的お気に入り50年代ミュージカルの四強入り!(笑)

今や落ち目となってしまったミュージカル俳優のトニー・ハンターは、旧知の仲である脚本家兼ソングライターのレスターとリリー夫妻に新作の話を持ちかけられる。新人バレエダンサーのギャビーとの共演が決まるものの、彼女との身長差や踊りの方向性の違いに戸惑うトニーだったが...。

『ラ・ラ・ランド』のあの名シーンや、マイケル・ジャクソンの'Smooth Criminal'の元ネタになったシーンなど、ミュージカルにあまり馴染みがない人でも思わず「あ!これは!」となる要素が盛りだくさん。
アステアとシド・チャリシーの奇跡的な相乗効果は言わずもがな、とにかくテンポが良くて、飽きずに最後まで観られます。次から次へと名曲が素晴らしいセットや演出とともに堪能できて、まさに本作の主題曲とも言える'That's Entertainment'そのもの。なんと赤ちゃんの格好で踊る'Tripls'などのブッ飛びナンバーもありつつ(笑)さまざまなジャンルの楽曲を楽しめるので、ミュージカルファンにはたまらないはず。

そして、とにかく感動したのは衣装!!この時代のミュージカルの衣装はとにかくビビッドな色合いが魅力ですが、ちょっとした色の組み合わせがこんなにも映えるものなのか...とそのセンスに脱帽。特にシド・チャリシーの脚線美がより強調されるように考えられたスカートのふんわり具合や、ウエストのキュッ!の締まり具合が絶妙で、ずっと彼女の衣装に釘付けになっていました。'New Sun In The Sky'のシーンの右手に赤いポンポンを付けるという些細な工夫も凝っていて素敵...!舞台の背景とのマッチングも今まで観たミュージカルの中で一番な気がしました。

撮影にあたってはかなりのプレッシャーを要する作品だったようで、特にシドとリリー役のナネット・ファブレーがベテラン俳優たちとの共演で苦労したとのこと。そんな苦労があったからこそ、この傑作が誕生したのだなと...。とある舞台の企画から興行までを追い、時に大コケしながらもスタッフ一丸となって作品を創り上げる過程が描かれているというのもあって、当時のミュージカルスターたちのプロ意識や努力を改めて痛感できる一本でした。
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