極楽蝶

チャップリンの殺人狂時代の極楽蝶のレビュー・感想・評価

チャップリンの殺人狂時代(1947年製作の映画)
4.5
パンチの効いたアイロニーをたっぷりとまぶしたコメディ映画の秀作!! 殺人の場面のない殺人犯の物語。
この作品では、主人公で殺人犯のアンリ・ヴェルドゥ(チャップリン)が死刑の前に獄中で記者に語る「一人を殺せば悪党だが、百万人を殺せば英雄だ。 殺人は数によって神聖化される」があまりにも有名。だけど、僕が注目したい彼のセリフは、冒頭で自分の子供がネコと激しく遊んでいる時、「暴力は暴力を生む」と注意するセリフ。何気ないセリフだけど、殺人犯ヴェルドゥの本来的な性格を表しているような気がする。こんなヴェルドゥも生活のために殺人を犯してしまう、あるいは誰でもが殺人犯になり得るというアイロニーが込められているように思いますねぇ!!
この作品のキーパーソンは、ヴェルドゥが雨の日に眠るように死んでいく毒薬を試すために自宅に招いた女性(マリリン・ナッシュ)だと思う。彼女は借りたタイプライターを質に入れたことで3か月間刑務所に入り、その間に病気の夫が亡くなった。それを聞いてヴェルドゥは毒薬の入った彼女のワインを捨て、お金まで渡して返す。何年か後、ヴェルドゥは高級車に乗る彼女に再会するが、その訳を聞くと軍需産業の社長と出会い、結婚したたという。世の中が不況で苦しんでいるとき、軍需産業だけは不況知らず。ヴェルドゥが彼女の名刺を破り捨てる場面も見逃してはいけないねぇ! 多くの労働者が不況に苦しんでいてもブルジョワはバーティーを楽しみ、労働者の苦しみの欠片も感じていたい!! チャップリンの視点はここにあるし、「殺人犯」はヴェルドゥなのか、不況知らずの軍需産業なのか、強烈な皮肉だよねぇ!!
ところで、ヴェルドゥの妻はなぜ車椅子だったのかなぁ!? その理由は作品中では語られていないけど、恐らく戦争のためだろうねぇ!?
極楽蝶

極楽蝶