第二次世界大戦の終結。
サイレントからトーキーへ。
そして、コメディからシリアスへ。
歴史の節目を縁取る貴重な作品。
相も変わらず事前情報無しで臨んだので、“笑える要素”が無いことを知りませんでした。なので、かなり戸惑いましたね。やっぱり“チャップリン=喜劇王”が強い先入観としてあるんですね。
これは、何か似た経験があるなあ、なんて記憶を探ったらですね。古谷実氏の『ヒミズ』を読んだときの違和感でした。「あれ?『行け!稲中卓球部』はギャグ漫画だったのに、これはギャグじゃないの…?」みたいな感覚ですね。
やっぱり、“笑い”を作る才能は他の才能と違って特別だから、“笑い”に特化してもらいたい、なんて思ってるんですけどね。でも、“笑いは繊細なので取り扱いが難しい”こと、 “才能の消費が激しい”ことも承知しておりますのでね。個人的なワガママだとお聞き流しくださいませ。
まあ、そんなわけで少しだけ淋しい気持ちで鑑賞したんですけども、最後まで鑑賞してみればチャップリンの気持ちも理解できたのですな。
“笑い”を積み重ねれば。
一時の慰めにはなるけれど。
銃が鳴れば、爆弾が落とされれば。
容易く破裂して蒸発してく生命。
一体、自分がしていることは何なのか。
そう感じても不思議ではない、寧ろ、感じて当たり前だと思うのです。
そう。
本作はチャップリンの“叫び”なんだと思うのです。だから。とても“つまらない”作品なのです。
自分が言いたいことを圧縮して届けるために。
積み上げた物語に、愉快なものは赦されず。
冗長で鈍重で退屈で。
目を背けたくなるような。
わざと、そんな作品に仕上げたのだと、僕は思うのです。
そして、それゆえに。
本作が「最高傑作だ」とご本人も言うのでしょう。とてもとても皮肉な話です。