HK

僕の村は戦場だったのHKのレビュー・感想・評価

僕の村は戦場だった(1962年製作の映画)
3.6
「惑星ソラリス」「ノスタルジア」などを後に監督するアンドレイ・タルコフスキー監督の長編第一作となる独ソ戦を描いたソ連の戦争映画。キャストはコーリャ・ブルリャーエフ、ワレンティン・ズブコフなどなど

第二次世界大戦時、独ソ戦真っ盛りのソ連において母親と妹を殺されてその復讐心だけで任務遂行をしようとしている少年がいた。彼の身の安全を願う上官等は彼に幼年学校に入るよう説得するが、復讐心で動いている彼は耳を貸そうとしない。果たしてどうなるのか。

タルコフスキー監督作はどれも抽象的で観念的な物を取り扱うために中々内容理解が困難なのだが、この映画は戦争という具体的な物を描いているせいか比較的に分かりやすいのかもしれない。

実際、まだデビューしたばかりなのか、台詞で心情を説明するような箇所も多く、彼の最大の特徴であるロングショットも抑えめである。長さも90分ほどであるため、とても見やすかった。

イワンが村の井戸で母親と瑞々しく暮らす様子は背景を明るくし、戦争している空間はどれも漆黒と言えるほどに背景を著しく暗くするなど、光の加減で心情を映像的に表す様子もとても良かった。

マーシャという従軍看護婦の人が出てくるあの白樺林が気持ち悪かったように感じた。表皮部分が白くぶつぶつの点々みたいなのがついていて、でもそこが却って幻想的でいいんでしょうね。

戦争映画であるがため、爆撃シーンなども勿論用意してはあるが、そこまで激しいものが詰まっている訳ではない。爆撃が終わった直後に十字架越しに太陽を照らし合わせることによって一瞬平和的な空間を彩る。

他にも小屋の中で窓から光が入射し鏡に反射するなど光の演出がすごい。他にも暗闇内での心の闇や殺された人たちの様子が幽霊みたいに現れることによって不安な心理状態にさせる箇所もある。そういう場面も良かった。

映画序盤において、イヴァンの母親がやられてしまうシークエンスでは、どういう撮影をしているか分からないけど井戸の下の水の底から彼らを見つめるあおりのショットを見せている。あれはどうやってやってるんだ?
普通に水中の中にカメラを設置しているのか?それとも特撮?いずれにしても拘りがすごい。

映画内では所々ショッキング演出として敵兵に殺されたのか絶望して自殺したのか分りませんが、二人の少年が首をつって死んでいる光景を見せられます。

いずれにしても戦争映画としての要素をしっかりと取りながらも、光や水の表現などでタルコフスキー色を全面に出しきった作品になっていてそこがとても良かったと思いますね。

ただ、個人的には好きか嫌いかと言うと…、う~んまあまあ美しいんですが戦争映画特有のきな臭さや外連味のようなものがなくて物足りない。それを期待するとちょっと拍子抜けするかも。

やっぱりこれは戦争映画というより、思いっきりタルコフスキー映画なんでね。タルコフスキーの映画…どうなんですかね。はまれるかどうかはわかりません。

全体的には映画の比較的尺の短さに救われたような気がしますよ。それでも見れて良かったと思います。嫌いな作品ではなかったです。

でも妹とトラックに乗っていくシークエンスは幻想的だったな。あの瑞々しさはモノクロの賜物。
HK

HK