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グッドナイト&グッドラックのkuuのレビュー・感想・評価

3.9
『グッドナイト&グッドラック』
原題Good Night, and Good Luck.
製作年2005年。上映時間93分。

“放送の良心”
として米国国民に愛された、エド・マローの生き様を描いた米国産本格社会派ドラマ。
1950年代初頭、ソ連との冷戦が激化する米国。
マッカーシー上院議員らによる共産主義者を排斥する“赤狩り”が実施される中、TVの人気ニュースキャスター、エド・マローと番組スタッフたちは、自由を守るために権力に立ち向かう。
ジョージ・クルーニーの『コンフェッション』に続く監督第2作。
※全編モノクロ撮影です。

共産党主義者を弾圧する“赤狩り”の嵐が吹き荒れていた。
大手TV局に勤めるエド・マロー(デヴィッド・ストラザーン)や同僚たちにも疑いの目は向けられ、自由な報道すらままならない状況下に置かれていたが、ジャーナリストとしてあるべき姿を追い求めるマローらは、真実を報道することを決意する。。。

ジョージ・クルーニーは、CBSテレビの ニュース・キャスターで、米国のジャーナリズム史における最重要人物であり、国民的英雄であるエド・マローをめちゃ巧みに演じてた。
赤狩り時代の実話を、クラシック・スタイルで映像化して高い評価を受けたのも理解できるました。
1953年ジョセフ・マッカーシー上院議員は、 米ソ冷戦と核戦争に対しての民衆の恐怖を利用した反共キャンペーン、通称『赤狩り』(赤は共産主義シンパを指す)を展開した。
その恐怖てのは人々から言論や思想の自由を奪い、国内は強度のパラノイアに陥った。
監督のクルーニーは、93分ちゅうタイトな上映時間の中で、この悪夢を終結へ導くきっかけをつくったCBSのドキュメンタリー番組『シー・イット・ナウ』におけるエド・マローと、その仲間たちの約一年間に及ぶ闘いの日々に絞り込んで描いている。
『赤狩り』てのは当時の映画界にも及んだそうで、多くの映画人の心に深い傷跡を残したと思います。
今作品でクルーニーは、製作当時のブッシュ政権と、新聞やTVをはじめとする報道メディアの堕落を背景を睨んでる。
そんな本作品は、米国史の汚点と、国民的な英雄を描いた物語やけど、しかし、本作の後味が苦いんは、ワシントンポスト社とその記者たちの関係と比べると、利潤を追うテレビ業界に批判的やったマローと局の間には、より深い溝があったから50年代の『米国』と『映画』と云えば、広告のようにカラフルな色彩で描かれたバラ色の人生をイメー ジするんやけど、
一方で、敗者のイメージを打ちだして、鋭角的な構図とハイコントラストの白黒映像によって同時代の不安感を描いたフィルム・ノワールや、社会派監督たちの厳しい現実感があった。
本作品は、後者の映像的なムードを再現してるし、それらの映画が製作された時代を検証してる。 
また、カメラの主張を巧みに抑えてて、ノワール映画の様式性とドキュメンタリー・タッチを混在させた美しい映像スタイル をつくりだしているしホンマ巧いなぁ。
実力派ぞろいの俳優陣の中で特筆すべきは、静かな物腰のなかに強靭な意志を秘めたマローを見事に演じるデヴィッド・ストラザーンかな。
本作品は、長いキャ リアの中で、名脇役として活動してきた彼の一世代の大役となったと思う。
今作品の背後に吹いている時代の風は激しいけど、その風の猛威を、静かに見つめた大人の映画やと思たかな。ジョージ・クルーニーは、
『民主主義はこれまでもたびたび危機に瀕してきた。
中世の魔女狩り、
冷戦時代の赤狩り、
そしてもちろん〈愛国主義〉を謳ったイラクへの攻撃。
その元にあるのは僕らの恐怖心で、それがいいように利用されてしまう。
でも唯一の明るい光は、毎回その果てに我々は正気を取り戻すということ。それが希望であり、僕ら の可能性だと思う』
と何かで書いてた。
そんな監督作品は個人的には素晴らしかったですよ~。
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