考えながら映画を見ることに少しくたびれ、ゆるゆるふわふわしたものを求めて鑑賞。本多猪四郎監督、円谷英二特技監督のコンビ。
NOPEのように、何の意思を持つかわからない飛行物体が、栄養を求めて世界中の石炭を吸い込む話。北九州の襲撃シーンは圧巻。クトゥルフ感のある緑色のクラゲは全容が見えないほど巨大で神々しい。雲の切れ間から足をうねらせ、石炭を至る所で吸い込んでは吐き出し、街がボロボロになっていく。石炭のリアルな吸い込み描写、若戸大橋が持ち上がり、妙な間と共に落下する不気味さなど、他の怪獣映画では見られない斬新な表現が詰まっている。
全体としてはドゴラの出番は少なく(撮影が難航し、使われたカット自体が少ない)、宝石窃盗団と刑事の追いかけっこが主体で、ゆるめのスパイ映画に近い。怪獣映画を期待すると大いに肩透かしを喰らう。真面目な人間の駆け引きに、ドゴラの影響で宙に浮くおっさんがいきなり紛れ込む唐突感は不気味で面白いが。
また、窃盗団の会話や警察の捜査シーンは、本多猪四郎の力なのか、編集の藤井良平の功績なのかわからないが、かなりテンポの早い映像の繋ぎになっており、必要な情報を示した次の瞬間には別のシーンに移る。退屈しないリズムが保たれている。
巨大ドゴラを撃退すると分裂した子クラゲになる終盤の展開も悪くはないが、北九州襲撃のインパクトは超えてくれない(ドゴラへの特効薬を量産し、ドラム缶が次々に運ばれてくる場面はシンゴジラ風味)。今作がコケた事で東宝はSF路線を辞め、ゴジラ一点集中にシフトしていったらしいが、光るものは随所に感じる出来なだけに、何とも勿体無く思える。