垂直落下式サミング

宇宙大怪獣ドゴラの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

宇宙大怪獣ドゴラ(1964年製作の映画)
3.1
地球上の生物の原理が通用しない宇宙細胞生物をテーマにした東宝の野心作。
ドゴラは大きなイカかクラゲのような体で、空高く浮遊しながら、雲の中から炭素を食べるために石炭などを吸い上げたり、攻撃を受けると巨大な触手を伸ばして反撃してくる。デザインしたのは、『地球防衛軍』『海底軍艦』の小松崎茂。一瞥しただけで、これが宇宙から飛来した未知の生物だと納得させられるだけの説得力がある姿だ。
ある特定の物質を食いに地球にやって来た宇宙怪獣ということだが、空に浮いているだけで、運動、熱、電気、すべてのエネルギーを吸収してしまうバルンガを弱くしたみたいな設定であるため、テレビシリーズが描いた敵よりも小物に感じてしまうのは否めない。30分番組で語りきれる敵で80分持たせるのは確かにキツイ。
特撮は、水槽内にビニール製のドゴラを沈めて動かしたり、ミニチュアの吊りでなくアニメ合成で触手を描いたりと、様々な実験的映画手法に挑んでいる。雲のなかから降りてくるシーンは、ラヴクラフトに出てくる旧神のようで、ゆらゆらとした触手の動きは、そんじょそこらのCGよりも生物感があって気持ち悪い。
着ぐるみではない実態のない怪獣で一本作るというチャレンジ精神をもって評価できるが、ちんけな人間ドラマがストーリーにからむと、とたんにスケールが小さくなる怪獣映画の弱点が露になっているため、決してすべてが成功しているとは言えない。
あくまで怪獣騒動に付随する事件であるはずの強盗とそれを追う刑事の関係を掘り下げすぎているため、興味の持続が分離してしまって、交互に2本別々の映画を見ているような不思議な気持ちになってくる。
怪獣映画における人間ドラマパートで興味深いのは、それを研究し対策する科学者や自衛隊の視点であって、怪獣騒動に直接関係ない人々のあれこれはいい加減でも構わないということがよくわかる教材。
外国人俳優の流暢なんだか変だかわからない日本語を聞いてくらくら。カタコトというか空耳アワー。