ひでやん

魔術師のひでやんのレビュー・感想・評価

魔術師(1958年製作の映画)
3.7
旅廻りの魔術師一座と役人たちの一夜を映像の魔術師が描いた喜劇。

霧にけぶる森に差し込む斜光、その幻想的な映像美に序盤から心を奪われた。酒に溺れた役者によって「死」のイメージを漂わせ、その伏線を怪奇現象で回収する演出は良かった。

幽霊、交霊術、超能力といったオカルト的要素に戸惑いながらも、魔術のトリックを見破ろうとする役人と一座の攻防戦に期待した。

料理番を誘惑する助手、メイドを口説く御者、魔術師に言い寄る領事の妻、それらの場面にインチキを信じる心の弱さやエロスのイメージが展開されるが、少し退屈だった。

そして期待した科学と魔法の対立だが、笑われる空中浮遊に落胆。絶対に見破れない仕掛けで役人の鋭い目を欺き、衝撃の種明かしをしてほしかった。

鏡の映り込みや「手」のフレームインなどの巧みな演出に不安と恐怖を感じながら、「テッテレー」というドッキリの滑稽味をじわじわと覚えた。
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